3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 体力の衰えとともに理想の長嶋茂雄との戦い?
今回は『1972年9月18日号』。定価は100円。
8月31日、巨人・
長嶋茂雄の打率が.268となった。
7月20日、前半戦終了時が.300だったことを考えれば信じられぬ急降下と言える。不振の理由について、本人は、
「夏バテ? とんでもない。俺の体はぴんぴんしているよ。それより打てないのは純粋に技術的なことで欠陥が出てきたからだと思う。俺には分かっているんだ。それを自分で直す。それしかないんだ」
と話していた。小守トレーナーは、坐骨神経痛系統に疲労が蓄積し、後背筋の張りがあったためではないか、と言うが、「体の問題なら昨年のほうがひどかったが、それでもあれだけの成績を残していた」とも言う。前年71年は打率.320で首位打者、34本塁打、86打点だった。
国松彰コーチはこう分析する。
「振りが大きくなって足、腰、目の位置やリズムが狂った。それは精神的なものからきているはずだ。打とう打とうという意識が少しずつ全体を狂わせたと思う」
年齢の衰えがありながらも、あくまで全盛期の自分、いわば自分とファンが追い求める理想の「長嶋茂雄」とのギャップが生まれているのかもしれない。
長嶋は言う。
「若い時と比べりゃ、そりゃ、あらゆる面で力は違うさ。無理したらパンクしちゃう。二十代と同じことをやっちゃもつわけがない。三十代には三十代の生き方があるからね。しかし、俺はそれでもあきらめない。老け込まない。歳は取っても歳に食われることはないよ。それに気力と技術のしっかりとした裏付けがあればいい。その自信はある」
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM