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MAX145キロを誇る投手のチェンジアップを打つコツは?【後編】/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.大学2年生のシーズンをまもなく迎える者です。ストレートのMAXが145キロでチェンジアップを決め球にするピッチャーのいるチームがあり、対応に苦しんでいます。狙い球を絞って打席には入りますが、やはりいつかはこのボールを攻略しないと、とも考えています。何か良い対応方法はないでしょうか。そもそも、チェンジアップを打つコツとはなんでしょう。(北海道・19歳)


5月2日の阪神戦(甲子園)の5回、阪神の新人・佐藤輝明はチェンジアップをうまく拾い、逆転満塁弾を放った


A.右対右、左対左でチェンジアップが投げにくい投手もいる。チームとしてチェンジアップの使い手を攻略したい

 前編では、チェンジアップを決め球とするピッチャーへの一般的な対応方法として、(1)ゾーンを上げて低めに変化していくボールに手を出さないこと。(2)ポイントをやや後ろに持ってきて、見極めながら逆方向に打つ意識をしておくことが必要だと説明しました。アプローチ方法の1つとして、配球パターン、攻め方を知り、チェンジアップとその他の球種による腕の振りを観察することも大事であると解説しました。続けましょう。

 緩いボールを投げるときに腕の振りが緩む傾向にあるピッチャーは攻略しやすいのですが、逆に、緩いボールを投げるとき、強く腕を振ることができるピッチャーは本当に厄介で、私も現役時代に苦しめられました。ホークス時代のチームメートで、チェンジアップの使い手でもある杉内俊哉(現巨人投手コーチ)に話を聞くと、チェンジアップを投げる際の注意点として、「真っすぐ以上に腕を振る」ことを意識していたそうです。真っすぐと異なる特徴が現れれば、待って打つことができるのですが、強く腕を振られるとこちらは「速いボールが来る」と身構えてしまいます。

 そのタイミングで振りにいくと、ボールが来ないという状態になり、バットが空を切ります。ロッテヤクルトで活躍した成瀬善久(現BCL/栃木)などはストレートが130キロ台でも、すべての球種が同じ腕の振りで出てきたので、非常に攻略の難しいピッチャーでした。

イラスト=横山英史


 こう説明していくと、絶望的に感じますが、あくまでもプロの一線級のピッチャーの話であって、腕の振りの違いはどこかに出てくるものです(プロでもいます)。また、チェンジアップはプロでも右対右、左対左では「投げづらい」と言うピッチャーもいます。利き腕側にやや逃げながら落ちていく軌道を描くボールのため、コントロールしていく目安のエリアが限られているからなのだそうですが、これを意識すると引っ掛かって落ち切らず、半速球となって甘いコースに行くリスクがあるのだとか。

 杉内のように、そのようなことはお構いなしにどんどん真ん中低めに落としてくるピッチャーもいますが(だからこそ、ゾーンを上げる)、これも質問の方がチームとしてチェンジアップの使い手を攻略する上で、1つのヒントになると思います。とにかく観察することを忘れないでください。

<「完」>

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2021年4月12日号(3月31日発売)より

写真=BBM
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