週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

勝てば「一部残留」が決まる大一番も青学大・安藤寧則監督が星勘定をしない理由は?

 

全盛期を肌で知るだけに……


青学大の主将・泉口友汰が駒大1回戦(5月6日)でリーグ戦初本塁打。この一発が勝ち越し2ランとなり、チームを勝利へと導いた


 東都大学一部リーグは今春、従来の6校ではなく、7校による変則開催である。昨秋はコロナ禍により、一部二部入れ替え戦が中止。二部優勝校・青学大が一部へ自動昇格するという、特別措置が取られた。

 5月6日現在で、優勝争いは中大と国学院大の2校に絞られた。

 同日、青学大は駒大1回戦で5対1と快勝。1対1の7回裏に主将・泉口友汰(4年・大阪桐蔭高)が勝ち越し2ランを放った。投げては先発の右腕・松井大輔(2年・県岐阜商高)が9回一死までを1失点に抑え、リリーバーを任されている右腕・森圭名(4年・富山第一高)が後続の2人を封じている。

 神宮球場の記者席裏で取材に応じた青学大・安藤寧則監督は、複雑な表情を見せた。

「これは、これでうれしいですが、いくら勝ち星を積んでも、優勝はありませんので……。ふと我に返ると、(V逸が)ちらつく。下(6、7位争い)のことは考えず、1勝、1勝を目指していますので……。選手に怒られるかもしれませんが、星勘定はしていません。全日程が終わって、最終順位が出たときに、次につなげていくことを考えていますので……」

 今春は一部二部入れ替え戦もイレギュラーである。一部の6、7位校と二部1位校の3校で争われ(総当たりの計2試合)、1校のみが今秋に一部で戦う権利を得られる。一部6校、二部6校、三部6校、四部3校という、通常の形に戻すための運営となっている。

 戦力が拮抗し、生存競争の激しい「戦国東都」においては「リーグ優勝」を目指す前にまず、「一部残留」が最優先という考え方もある。一部は神宮球場が会場であるが、二部は公営球場。注目度、環境面とも天と地の差である。

 今春で就任3年目の安藤監督は昨秋、二部優勝へ導き2014年秋以来の一部昇格を決めた。一部で戦うことが目的ではない。ようやく、本来あるべきステージへ戻ったという受け止め方であった。安藤監督は大学時代、4年時(1999年)に学生コーチとして大学選手権制覇を経験。「常勝・青学」の全盛期を肌で知るだけに、常にリーグ優勝、大学日本一を狙えるレベルにいることを「復活」と位置付けている。つまり、下(入れ替え戦回避)を見た守りの戦いには、興味を示さない。上だけを見て、攻め続けているからこそ、駒大1回戦での試合後のコメントとなってくるのだ。

 今春は1日3試合で、6校が登場する。全7週制で、1校が空き週になる。青学大は3月29日の開幕週から今カードの第6週まで、1週も休まず、6校との対戦が続いている。相当な疲労のはずであるが、もちろん言い訳はしない。この日の1勝で、通算5勝6敗。7日の駒大2回戦はシーズン最終戦である。勝てば「一部残留」が決まる大一番。安藤監督は星勘定に一切、関心を見せないが、主将・泉口は「知っています!」とマスク越しから笑顔を浮かべた。「せっかく今日勝ったので、良い形でリーグ戦を終えられたらいいです」。秋へつなぐための、大事な駒大2回戦である。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング