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プロ野球はみだし録

西武の高橋光成で話題の長髪。昭和から平成にかけての時代なら「見苦しいから切ってこい」?【プロ野球はみだし録】

 

「薄っぺらな反骨心でした」


負けるまで髪を伸ばし続けている西武・高橋


 負けるまで髪を切らないことを宣言して2021年のシーズンに臨んだ西武の高橋光成が話題になっている。高橋は開幕から現時点まで負けなし。散髪のチャンスもなく、高橋の髪は着実に長くなり続けている。これまで外国人で長髪の選手は散見されたが、日本人の選手では圧倒的な少数派。それでも高橋は、まだ日本人の最長を更新していないのではないか。

 もちろん髪の長さを計ったわけではないが、見た限り、昭和から平成にかけての時代にロッテで活躍した水上善雄のほうが長かった気がする。水上は1976年にロッテ入団。2021年の高橋はプロ7年目の24歳だが、水上の髪が長くなり始めたのは1988年で、プロ13年目、31歳を迎えるシーズンだった。前年に初のベストナインに選ばれた水上は、ゴルフにハマったこともあり、散髪できないままキャンプイン、オープン戦では側頭部に死球を受けて入院。かなり髪が長くなった状態で開幕を迎えた。

 現在の高橋は球団の“公認”だが、このときの水上は球団から「見苦しいから切ってこい」と言われてしまう。好調だった水上には高橋と同様にゲン担ぎの意味もあったのだが、この“指令”に反発。切るか切らないかが騒がれたこともあり、ますます意地になって、結局およそ2年間、長髪でプレーを続けた。

89年キャンプでのロッテ・水上。球団からの断髪指令に抗って長髪を続けた


「いま思えば薄っぺらな反骨心でした」と水上は振り返るが、エースの村田兆治が通算200勝を懸けて登板した試合には、やはり死球で顔面を骨折して顔の中に銅線を通した状態で、「ボールがポンとでも当たったら目玉が飛び出して死にますよ」と医者から言われながらも出場を強行した男。「薄っぺら」な長髪が、強靭な反骨心を隠していたようにも見えた。

 プロ野球選手といえばパンチパーマという時代だった。パンチパーマがOKで長髪がNGというのも現在の感覚からは奇妙に見えるが、江戸時代にはチョンマゲが正装だったわけで、いつの時代も髪型の“ルール”というのは奇妙で刹那的なロジックで成り立っているものかもしれない。さて、現役の高橋。逆説的だが、長髪の“公認”で、反骨の象徴として語られないのも、すこし気の毒な気がする。
 
文=犬企画マンホール 写真=BBM
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