守備の花形であるショート。内野の要である存在がしっかり仕事を果たしているのか。セ・リーグ6球団の「遊撃手事情」を見ていく。 記録は6月11日現在 阪神タイガース
ライバルはいなくなった形だ。ドラフト6位の中野拓夢が遊撃のレギュラーをがっちりとつかみ取りつつある。開幕は
木浪聖也がそのポジションにいた。しかし、打撃に勝る中野を起用すると結果を出し、そのままスタメンショートの座に就いた。積極的な打撃と走塁が売り。今や2年連続盗塁王の
近本光司を1個リードする形でリーグトップタイの12盗塁を記録している。守備も
川相昌弘臨時コーチのアドバイスで送球時のステップを大きくしたことで送球が安定した。しかし、エラーはチーム最多の10。まだまだ勉強中だが、経験を積みながら、安定感を身につけようとしている。
読売ジャイアンツ
2008年の開幕戦に二塁で先発、試合途中に遊撃へポジションを移し、以降13年間、巨人の遊撃手は坂本勇人の一択だ。昨季終了時点で5419補殺はNPBの遊撃手における歴代最高記録で、4度ゴールデン・グラブ賞を受賞。打っても史上2番目の若さで通算2000安打を達成するなど、球史に名を刻む遊撃手である。まだまだ脂の乗った32歳。今季は6月11日に復帰するまで、右手母指末節骨骨折の影響で約1カ月間の離脱があったが、不在であらためてその存在の大きさを認識させられた。その間は
若林晃弘、
廣岡大志、
吉川尚輝が代役を務めたが、「ポスト坂本」育成問題は容易には解決できそうもない。
東京ヤクルトスワローズ
開幕戦は西浦直亨が遊撃のスタメンで、6月11日現在でもチームトップの41試合で守っているが、打撃の不調もあり、現在はルーキーの
元山飛優が出場することが多い。元山は東北福祉大時代から守備力には定評があり、プロ入り後も軽快なフットワークで好守を見せている。6月10日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)では2安打を放つなど、打撃もまずまず。ただ、西浦がこのまま黙っているはずがない。意外性のある打撃で、必ずや巻き返してくるはずだ。同時に、ファームでも
長岡秀樹、
武岡龍世が牙を研いでいる。若手も台頭してきているだけに、遊撃のレギュラー争いは誰も気が抜けない状況だ。
中日ドラゴンズ
中日のショートは京田陽太。2017年に入団して以来、ずっとそれが当然のことだったが、交流戦が始まって間もなく、その京田がまさかの二軍降格となった。故障ではなく実力不足。京田にとってプロ5年目にして味わう初めての屈辱だった。圧倒的な守備力で今季も開幕から定位置を譲らなかったが、なかなか打撃の調子が上がらず、
与田剛監督がついに決断を下した。選手会長という立場もあり、チームに大きな衝撃が走ったのは言うまでもない。その直後は
三ツ俣大樹が代役を務めたものの、現在は二軍から京田と入れ替わりで上がってきたベテランの
堂上直倫がショートを守ることが多い。ただ、チームとしての理想系はやはり“ショート京田”だろう。本来の力を取り戻し、一日でも早く定位置に戻りたい。
広島東洋カープ
開幕は
田中広輔でスタートしたが、打率1割台の不振。代わって4月下旬から先発出場の機会を増やしたのが小園海斗だ。新型コロナウイルス陽性判定を受け、5月後半は戦列を離れたが、6月4日から復帰。6月11日現在、打率.329、7度のマルチヒットを記録するなど、好調な打撃を見せてスタメン出場を続けている。一時は二番や五番などでの起用もあったが、走塁でのミスが出るケースもあり、最近は比較的自由に打てる六、七番での起用で打順は固まりつつある。守備でも好プレーが見られるようになるなど、徐々に一軍でプレーする感覚、マツダ広島で守る感覚も取り戻してきたよう。このままポジション定着といきたいところだ。
横浜DeNAベイスターズ
基本的に二塁とのセットで、二遊間は大和、
柴田竜拓、
倉本寿彦らが日替わりで守ってきたが、今季は開幕戦で守った柴田がショートの定位置を獲得したかに見えた。しかし、柴田は4月23日の阪神戦(甲子園)の守備中に(このときのポジションは二塁)、チームメートと交錯。左肩脱臼により登録抹消されてしまった。その後は、若手の
知野直人がスタメン起用された試合もあったが、現時点では遊撃・大和、二塁・牧のコンビが定着している。
写真=BBM