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プロ野球はみだし録

「杓子定規で測れる問題ではなかった」と審判も苦悩。地方球場にはアクシデントが多い?【プロ野球はみだし録】

 

初の快挙もあったが、それ以上に……


巨人クロマティ中日・宮下を殴打した“事件”が起きたのも地方球場だった


 西武平良海馬が開幕から続けてきた連続試合無失点が途切れたのは旭川スタルヒン球場だったが、地方球場での試合は目が離せない。見慣れた球場ではないだけでも新鮮だが、それはシーズンで数えるほどしか開催されないため。ただ、少ない試合数にもかかわらず、球史に残る出来事は多い。

 すでに紹介したが、巨人の藤本英雄がプロ野球で最初の完全試合を達成したのは青森市営球場だった。その3年後には尾道西高校のグラウンドで行われた試合で広島白石勝巳による“縄ホームラン”。これは白石の打球を本塁打にしたいと地元ファンが外野フェンスの縄を一斉に前へ出して“即席ラッキーゾーン”のようなものを作ってしまったものだ。どちらかといえばアクシデントに近い逸話だが、その後も残念ながら地方球場にはアクシデントも多い。有名なところでは、1987年に巨人のクロマティが死球に怒って中日の宮下昌己に襲いかかったのは熊本藤崎台球場。同じ巨人では、翌88年に吉村禎章が守備で左ヒザじん帯3本を断裂する重傷を負ったのは札幌円山球場だった。

 ファンも荒れる傾向があり、98年には静岡草薙球場で阪神ファンが執拗に試合を妨害、見かねた阪神の伊藤敦規が説得する場面も。99年に福井県営球場で行われた中日と阪神の一戦では、雨のためグラウンド整備に時間がかかり、試合開始の時刻を3度の変更。当初の18時から18時20分、続いて19時となり、最終的に試合が始まったのが19時12分だった。セ・リーグのアグリーメントでは開始を遅らせられるのは1時間まで定められていたが、この試合の責任審判だった小林毅は「杓子定規で測れる問題ではなかった」とコメント。アグリーメントは百も承知だったに違いないが、慣れない球場での開催で、実際に観客も騒ぎ始めており、苦悩の決断だったことがうかがえる。

 このカードでは、4年後の2003年に岐阜長良川球場で開催された一戦で、試合の終了とともに両チームのファンが衝突、催涙ガスのようなものが噴射されて、51人が治療を受ける事態に発展している。

 選手も審判も、なにかと勝手が違うことは確かだろう。一方、本拠地球場が遠い地元ファンには貴重な経験。快挙を望むのは贅沢なのかもしれないが……。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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