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なぜエンゼルスの大谷翔平は打球を遠くに飛ばせる?【前編】/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.MLBエンゼルスの大谷翔平選手がホームランを量産しています。引っ張るだけではなく、逆方向にも大きな当たりを連発していますが、なぜあのように遠くに飛ばせるのでしょうか。技術的な特徴も教えてください。(大分県・15歳)


エンゼルス・大谷翔平


A.体の変化で土台がしっかりとし、軸のブレがなくなりました。センターへ130〜140メートル打てることで心理的にも楽に

 エンゼルス・大谷翔平選手の連日の活躍には本当に驚かされています。毎朝、彼の活躍を中継で見るのが楽しみだという日本のファンの方も多いようですね。7月8日(日本時間)の試合では、松井秀喜(※同学年です)の持っていたMLBの日本人シーズン最多31本塁打を抜く32本塁打目を放ちました。どこまでこの数字を伸ばすのか、50本塁打超えを期待してしまいますね。

 メジャー4年目での飛躍の理由は何か。まずは体の変化が挙げられると思います。1年目にトミー・ジョン手術をし、2年目にはヒザの手術も経験しています。その中で、段階を踏んでリハビリ、トレーニングを行い、細かな筋肉、大きい筋肉を、正しく計画的に鍛えられたのではないでしょうか。1、2年目とは体つきが明らかに違いますし、土台がしっかりとしています。加えて昨年は短縮日程の中で、トレーニングに時間を割きつつ、体の変化と実際の動きをアジャスト。そのおかげで、スイング時、軸にブレがなくなり、完全に打たされての凡打が少なくなったと思います。

イラスト=横山英史


 センターバックスクリーンへ、見た目にはやや崩されながらも腕を伸ばしてボールを拾い、ホームランにしたシーンがありましたが、これも以前の大谷選手ならばもっと泳がされ、引っ掛けて凡打させられていたと思います。「見た目には」と言ったのは、上体(軸)が前に出されないように打席の中で粘り、我慢して我慢して最後に腕を走らせた、というシーンでしたので、実際には崩されてはいない、ということです。これができるのは大きいですし、やはり、センターにホームランが入るのは、バッターには心理面でも大きな余裕が生まれます。

 引っ張ったほうがホームランになる確率が大きいと普通は思うものです。中堅120メートルに対し、両翼は100メートル程度ですからね。ただ、引っ張ろうとすると、当然、力みが生まれます。しかし、大谷選手はそれをはるかに超える130〜140メートルをセンターに打てるのですから、差し込まれようが、泳がされようが、両翼は100メートルしかないので、力まず打席に入れる、ということです。外目のボールなど、強引に引っ張る必要がありません。センターに打ち返せば、多少遅れてもレフトスタンド。そういった安心感もあるのでしょう。自分のポイントまでしっかりと呼び込んでからスイングができていますね。

<「後編」に続く>

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2021年7月26日号(7月14日発売)より

写真=Getty Images
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