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なぜエンゼルスの大谷翔平は打球を遠くに飛ばせる?【後編】/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.MLBエンゼルスの大谷翔平選手がホームランを量産しています。引っ張るだけではなく、逆方向にも大きな当たりを連発していますが、なぜあのように遠くに飛ばせるのでしょうか。技術的な特徴も教えてください。(大分県・15歳)


エンゼルス・大谷翔平


A.少し差し込まれたとしても、後ろの腕で押し込む力もある。肩甲骨周り、ヒジの柔らかさと無関係ではありません

 MLBオールスターのホームラン競争では、1回戦敗退となってしまいましたが、2度の延長を戦うなど、十分に楽しませてくれました。150メートル級の当たりも打っていましたね。前半戦33本塁打は両リーグ通じてトップ。本当に感心してしまいます。

 さて、エンゼルス・大谷翔平選手の飛距離についてですが、前編では、メジャー4年目での体の変化があって土台がしっかりとし(もちろん、ケガからのリハビリを含め、トレーニングの賜物です)、軸のブレがなくなったこと、センターへも130〜140メートルの大飛球を打てることで心理的にも楽になったことで、ホームランが増えてきた、と私の見解を説明しました。

 心理的に楽になると、力まず打席に入れるので、アウトコースのボールなどを強引に引っ張ることがなくなります。センターに打ち返せば、多少遅れてもレフトスタンド。実際にそのような打球が増え、結果も出てきたこともありますが、今季は自分のポイントまでしっかりと引き付けられているのも大きいです。右肩が開くのは、強引にインハイのボールに対応するときぐらいでしょうか。

 引き付けておいて、少し差し込まれたとしても、後ろの腕で押し込む力もある。これは肩甲骨周りの柔らかさ、ヒジの柔らかさと無関係ではないと思います。そこに柔軟性があるから、右肩が閉じていても、とらえたところからグッと押し込んで持っていけるのです。大谷選手は右投げ左打ち。一般的に、このタイプの選手は右手の操作は分かっていても、後ろの手(つまり左手)の押し込み方の感覚がないことが多いのですが、左ヒジの入れ方、押し込み方が分かっていて、豪快な部分ばかりが目立ってしまいますが、器用さもあります。強引に振り上げているように見えますが、トップからポイントまではしっかり打ち込んでいますし、ポイントで最大の力が伝わるフォームだと思います。そこからV字の軌道を描いていく。

 どこまでホームランの数を増やしてくれるのか。皆さんも興味深いところだと思いますが、どれだけ強引さを失くすか、だと思います。これまでのように自分のポイントでしっかり振れば、センターに入ると分かっているのですから、最後まで貫き通すこと。すでに相手ピッチャーが勝負を避けるようなことが多くなってきていますが、しびれを切らして難しいボールに手を出さないことを祈ります。

<「完」>

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2021年8月2日号(7月21日発売)より

写真=Getty Images
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