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背番号物語

【背番号物語】楽天「#8」“ラッキー・セブン”から“末広がり”に転じた辰己涼介が背負うのはパの歴史?

 

“ミスター・ロッテ”の遺伝子


現在、楽天で背番号「8」を背負う辰己


 この2021年は開幕から好調の楽天。開幕戦の先頭打者として初球をスタンドに叩き込み、快進撃の起爆剤となった辰己涼介が背負うのが「8」だ。ドラフト1位で19年に入団、1年目から「7」を与えられて即戦力となった辰己だが、ロッテからFAで加入した鈴木大地に「7」を譲って1年で「8」に変更、現在に至る。“ラッキー・セブン”の「7」から“末広がり”の「8」という、数字で運の吉凶をうらなう向きからは羨望を集めそうな(?)背番号の変遷で、実際、これが吉と出たといえる活躍を見せている。

「7」も1年の欠番を挟んだ前任は西武の「7」として活躍、楽天から西武へ復帰して通算2090安打を残した松井稼頭央で、その前が楽天で復活して本塁打王に輝き、中日で引退した山崎武司とレジェンドが歴任したナンバーだが、「8」では19年オフに現役を引退、コーチに転じた今江年晶(敏晃)の後継者となった。FAで16年にロッテから楽天へ移籍してきた今江も18年の現役生活を過ごしたレジェンドの1人だ。

ロッテから楽天に移籍しても背番号「8」を着けた今江


 今江についてはロッテの「8」を紹介した際にも触れたが、古巣では“ミスター・ロッテ”の系譜とされる「8」をプロ4年目、奇しくも楽天がプロ野球に参加した05年に継承、正三塁手として大ブレークを果たして、リーグ優勝、日本一に大きく貢献。阪神との日本シリーズでは千葉マリンで行われた第1試合、第2試合で全8打席8安打の打率1.000、甲子園の第3戦でも2安打を放つなど、最終的には全4試合で打率.667という驚異的な数字を残した。さらにロッテ“史上最大の下克上”と言われた10年にも中日との日本シリーズで全6試合で12安打。“下克上”を完成へと導いている。

 古くから縁起がいいといわれる「8」は、これを自らの象徴とした今江にとってもラッキーナンバーだったといえるかもしれない。“ミスター・ロッテ”を完遂することはなかったものの、楽天の「8」として現役生活を終えて、その遺伝子をプロ2年目の若き辰己に託している。

 ただ、今江の加入した15年オフ、楽天の「8」は空席だったわけではない。このとき「8」を背負っていたのは、このときプロ2年目、この21年も「36」でプレーを続けている内田靖人だった。福島県の出身で、茨城県の常総学院高からドラフト2位で14年に入団、1年目から1ケタの「8」を与えられた“ラッキーボーイ”だったが、「8」では一軍に定着できず、7試合の出場にとどまっている。

 東北の出身としても地元の期待を集めた内田は楽天の「8」では3代目だが、生え抜きの選手としては第1号。前任の2代目はオリックスでプロのキャリアをスタートさせた中島俊哉だった。

近鉄とオリックスの面影も


楽天の初代背番号「8」は礒部


 中島はドラフト2巡目で03年にオリックスへ入団。与えられた背番号は「64」で、04年の球界再編でオリックスが近鉄を吸収する形で合併、新たに楽天が誕生したことで、分配ドラフトで楽天へ移籍して、そのまま楽天の初代「64」となった。「8」に変更したのは10年からで、左投手に強い“左キラー”の代打として13年には初のリーグ優勝、日本一にも貢献している。ただ、そのオフに内田へ「8」を譲る形で「52」となり、翌14年オフに現役を引退。最後まで「8」を背負い続けることはかなわなかった。

 オリックス出身の中島だったが、楽天の「8」で初代となったのは近鉄で最後の「8」だった礒部公一。礒部についても近鉄の「8」を紹介した際に触れているが、プロ5年目の01年に「22」から変更してブレーク、分配ドラフトで“移籍”した楽天でも変わらず「8」を背負い続けたものだ。ちなみに礒部、そして現在は内野手の内田は、ともに最初は捕手。これは捕手の系譜だった近鉄の「8」を継承する傾向といえるかもしれない。

 創設の経緯からしても、1ケタの背番号であっても生え抜きの選手が少ないのは楽天の大きな特徴だ。「8」だけでも近鉄、オリックス、そしてロッテの遺伝子が流れている。「7」では西武の系譜も受け継いだといえる現役の辰己が背負うのは、楽天にとどまらず、パ・リーグの未来なのかもしれない。

【楽天】背番号8の選手
礒部公一(2005〜09)
中島俊哉(2010〜13)
内田靖人(2014〜15)
今江年晶(2016〜19)
辰己涼介(2020〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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