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2021夏の甲子園

惜しくも初戦敗退の弘前学院聖愛。“100パーセントりんごジュース”で目指す「ノーサイン野球」【2021夏の甲子園】

 

「野球型の人間は使えない」


弘前学院聖愛(青森)は石見智翠館(島根)との2回戦(8月21日)で初戦敗退(3対4)。最終回の粘りは見事だった


■8月21日 2回戦
石見智翠館4−3弘前学院聖愛

 弘前学院聖愛は2013年以来、8年ぶり2回目の甲子園出場。3回戦に進出した前回同様、原田一範監督は「100パーセントりんごジュース」と、青森県内の出身者で全国舞台へ挑んだ。石見智翠館(島根)との2回戦(8月21日)は初回に2点を先制するも、3回に追いつかれ、8回に2ランで勝ち越しを許した。2点を追う9回に1点を返したが、粘りもそこまでだった(3対4)。

 弘前学院聖愛・原田監督は「敗因」を問われると、「聖愛の野球ができなかった」と語った。それは何か?

「打つ、投げる、走るだけではなくて『対状況』で野球をやっていこう、と。今年はゲームが少ない。うまく、野球ができなかった」

 18人のベンチ入りメンバーは「オールりんごっ子」だが、2013年夏とはスタイルを大きく変えた。原田監督は明かす。5年前に参加した講演会がきっかけだったという。

「経営者が対象で、これからは『野球型の人間は使えない』と。要は1球1球、上司(監督)の顔色をうかがっているような人間ではダメである、と。ラグビー、サッカー型の人間。自分たちで考えて、動ける人間でないと、これからの世の中は生きていけない。働いていけない。頭を金槌でたたかれたような気分になりました。野球で人を育てようと思い、ノーサイン(の野球)にしました」

 選手たちには当初、戸惑いがあったというが年々、グレードアップ。「野球は無数の判断があるスポーツ」(原田監督)と、世代と実戦の場を重ねるごとに、判断能力を高めた。

 しかし、昨年、今年は事情が異なった。新型コロナ禍で、弘前学院聖愛も部活動が制限。そして今夏の甲子園は天候不良による、度重なる順延。調整の難しさを原田監督は語る。

「練習会場の確保、選手のモチベーションの維持。うまく順応したほうだとは思います。ただ、6月下旬まで対外試合ができなかった。また、県大会決勝(7月26日)から約1カ月、試合ができない状況で、ゲーム勘をうまくつかめなかったと思います。状況判断をする回数が少ない中でやってきた。この甲子園という場で、悪い部分が出てしまった」

 原田監督は無念を話したが、持てる力を発揮した3年生に対して、労いの言葉を送る。

「昨年は夏の甲子園が中止になり、今年も対外試合ができず、甲子園に来てからも、コロナ対策、順延と苦しい思いをしてきた学年。よく気持ちを切らさず、頑張ったと思います」

 今後も選手の自律を促す「ノーサイン野球」を目指していくという。青森産の「100パーセントりんごジュース」をさらに濃厚にさせて再び、甲子園の舞台に戻ってくる。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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