読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンクの柴原洋氏だ。

Q.プロ野球を見ていると、成績を残している選手ほどファーストストライクから積極的にスイングしているように感じます。このような選手は狙い球を絞るようなことはしていないのでしょうか。プロの打者のボールの待ち方を教えてください。ただ、日本ハムの近藤健介選手はほとんどファーストストライクを打たないと聞きました。どういうことでしょうか。（北海道・17歳）

A.打者は大きく2つのタイプに分けて考えることができます

　打者は大きく2つのタイプに分けて考えることができると思います。真っすぐ待ちで変化球対応のバッター(A)、球種を絞るバッター(B)です。このいずれのタイプも、みな初球から打つ準備はしっかりしています。打席に立ってからでは準備は遅く、少なくともネクストバッタースサイクルにいる間に、相手ピッチャーのタイミングを計って、狙いを絞って、打席に向かうわけです。

　準備をしっかりした上で、Aのタイプに初球真っすぐが来たら打ちにいくでしょうし、Bのタイプで張っていた内側変化球が来れば、打ちにいくのは当然でしょう。この準備がプロ、特にレギュラークラスの選手たちはしっかりしているので、質問のように、「ファーストストライクから積極的にスイングしている」と言われるのだと思います。準備ができていないとムダに相手にストライクをあげるだけになってしまい、カウントを悪くすると自分のバッティングを窮屈にしてしまいます。その考えが、良いバッターには共通してあるのではないでしょうか。

　ちなみに、初球ストライクでも、イメージが違ったり、ズレていたりしたらスイングはしていきません。こちらのほうの確率も高いのですが、打っているシーンが目立つのは当たり前で、質問の方にはそのような印象が強く残っているのだと思います。ちなみに私は真っすぐ待ちの変化球対応のAタイプで、「真っすぐ待ち」とはいえ、甘いボールが来たら、変化球であろうと、タイミングさえあえばどんどん打っていきました。甘いボールというのも感じ方は人それぞれ。私の場合は真ん中周辺で、変化球ならばそれよりも浮いたボールでも打ちにいきましたし、少し引っ掛かり気味できたらゾーン内のボールでも我慢していました。

　基本的に、投手に応じて待ち方を変える選手は少なくて、いかに自分のタイプで、型で打ちにいけるか、ではないでしょうか。前述のように私はAタイプで、Bタイプのようにボールを絞って待ち過ぎてしまうと、逆に対応できなくなってしまうことが分かっていたので、常日ごろから真っすぐ待ちの、変化球対応。そこにはスコアラーさんが集めてくれるデータもあるので、「カウントによって7割スライダー」のように顕著なものがあれば、頭の中の割合を変えて対応するようにしました。

＜「後編」に続く＞

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2021年8月30日号(8月18日発売)より

写真＝BBM