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“大谷世代”の阪神・近本光司はドラフトで「外れ外れ1位」 3年連続盗塁王へ「意外な思い」とは 

 

1試合も休まず打線を牽引



 首位を快走している阪神だが、野手がそろって万全だったわけではない。不動の四番と期待された大山悠輔は打撃不振でスタメンを外れる時期があり、新外国人のロハス・ジュニアも来日当初は本来の力を発揮できず2度のファーム降格を味わった。新人左打者最多記録の23本塁打と前半戦から打線を牽引してきた黄金ルーキーの佐藤輝明も相手の徹底マークと疲労の影響もあるのだろう。7月以降は下降線をたどり、今月10日にファーム降格。その中でリードオフマンとして、1試合も休むことなく打線を牽引している男がいる。近本光司だ。

 1年目は142試合に出場し、長嶋茂雄(巨人終身名誉監督)のセ・リーグ新人年間安打記録(154安打)を更新する159安打をマーク。リーグトップの36盗塁で、同じ阪神の赤星憲広以来、2リーグ制以降では史上2人目となる新人盗塁王に輝いた。2年目も全120試合に出場し、31盗塁で2年連続最多盗塁のタイトルを獲得。球界を代表する一番打者としての地位を確立した。

 近本は「大谷世代」だ。大谷翔平(エンゼルス)、鈴木誠也西川龍馬(広島)、佐野恵太(DeNA)、柳裕也(中日)、同僚の藤浪晋太郎、大山とタレントがそろう。近本は社高校、関西学院大、大阪ガスを経てドラフト1位で阪神に入団する。阪神は大阪桐蔭・藤原恭大(ロッテ)、社高校の2学年下で立命館大・辰己涼介(楽天)の抽選を外し、近本は「外れ外れ1位」だった。

 俊足は折り紙付きだったが、想像以上だったのが打撃だった。身長171センチと小柄だが、右足を大きく上げて力強いスイングでパンチ力がある。新人年間安打記録を樹立したようにヒットゾーンに打ち分ける技術が高い。ミート能力も年々向上し、19年の110三振から昨年は61三振と大幅に減らしている。また、体力があり夏場になると打撃が上昇気流に乗る。暑い時期に強いのは一流選手の証だ。今季も3、4月は月間打率.222と波に乗れなかったが、5月以降に調子を上げていく。8月は月間打率.403、3本塁打、8打点をマーク。打率3割を超えるハイアベレージで1957年の田宮謙次郎以来と球団史上2人目の打率3割、2ケタ本塁打、30盗塁も可能性は十分にある。

精神的に優位になるときは?


 新人から2年連続盗塁王を獲得しているだけに、相手バッテリーも警戒する。その中でチームメートの中野拓夢に次ぐ2位の21盗塁は評価されるべきだろう。近本は5月下旬に発売された週刊ベースボールのインタビューで、「僕が走ってくるか、こないかというカウントのときに、キャッチャーがサイドウエストしてくるときがあるんです。つまりウエストして大きく外角に外すのではなく、外角のボールゾーンに、真っすぐや半速球(曲がりの小さく鋭いスライダーなど)を投げて、捕手が僕の様子を見るということがあります。それが今季は、僕がランナーとのき、特に多いな、と感じています」と分析した上で、盗塁を成功したときより捕手の裏をかいたときのほうが精神的に優位になるという。

「捕手が僕のことをすごく意識してくれているな、と思いますから。それで捕手が余計に迷うことにもなり配球も単調になるのでは、と思います。そこに輪をかけて糸原さんやマルテが打撃好調です。打者に打ってもらったほうが、得点につながりやすい、と思いますからね」とフォアザチームを強調している。

 ただ、盗塁に対するこだわりがなくなったわけではない。「盗塁をしなくなると、バッテリーも相手ベンチも『最近、近本走らないな』となって警戒を解かれてしまうので、効果的な盗塁というものをしていきたいな、と思っています」と語っている。

 阪神は若い選手が多い。今年リーグ優勝すれば大きな自信となり、黄金時代を築く可能性が広がる。もちろん、不動の「一番・中堅」は近本だ。

写真=BBM
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