週刊ベースボールONLINE

2021ドラフト

二松学舎大付高・秋山正雲 抜群の球質を持つ170センチ左腕に広がる無限の可能性【2021ドラフト候補】

 

トップギアを使いこなす


二松学舎大付高・秋山正雲


 球速は世代トップではないが、球質なら今年の高校生左腕でNo.1ではないだろうか。

 身長170センチの左腕が投げ込む最速146キロのストレートは、数値に表れない威力を秘めている。昨秋は東京都大会1回戦から5試合連続完投でチームをベスト4に導き、今春も都4強。夏の東東京大会は32回1/3を投げてわずか2失点で優勝を果たした。甲子園出場の原動力となったエースについて、市原勝人監督はこう評する。

「スピードガン表示以上に、ベース板の上でのスピード感があると思います。だから球速表示よりもバッターの反応で、球が来てるかどうかを見るようにしています。一番良いのはベース板でのボールの強さ、ピンチの場面での勝負強さ」

 得点圏に走者を背負うと、球威とキレが大幅に増す。自身初の甲子園のマウンドでも、勝負どころで相手打者を力でねじ伏せた。

 西日本短大付高との初戦(2回戦)は0対0の6回にピンチを招くが、そこからが圧巻だった。走者を三塁に置いてからはストレートがほぼ140キロを超え、一死満塁からはストレートのみで連続三振に仕留めホームを踏ませない。2点リードで迎えた9回は全球ストレートで三者凡退だった。

「一番自信を持っている真っすぐを投げて抑えることができて良かったと思います。二松学舎でエース番号を背負わせていただいているので、自分が崩れてはいけない。試合になったら気持ちが入ります」

 丁寧な口ぶりの裏側に確かな闘志を宿し、見事な完封勝利を挙げた。続く3回戦(対京都国際高)は、ストレートをとらえられて3被弾したが、攻めの投球スタイルは崩さない。果敢にストライクゾーンで勝負し延長10回、172球を投じたマウンドを最後まで1人で守り抜いた。

熱いハートとクールな頭


 甲子園は2試合で17奪三振。決め球はほとんどがストレートだった。気持ちの強さは間違いなくプロ向き。その一方、無鉄砲に何でもかんでも突っ込むのではなく、相手を見ながら変化球を混ぜるバランス感覚も持っている。その冷静さは2回戦でも見られた。雨の影響で地盤の緩んでいたこの試合、2回までは普段と同じくプレートの一塁側を踏んでいたが、ぬかるんでない場所を見つけた3回からは三塁側を踏み、立ち上がりにバラついていた制球を安定させた。ストレートを多投するのも自身と相手の力量、そして試合展開を総合的に判断し、それが最良の選択となるからだろう。

「チームに愛されたり頼りにされたり、こいつが投げたら大丈夫と思ってもらえるピッチャーになりたいです」

 小柄な左腕が威力満点のストレートで屈強なスラッガーをきりきり舞いませる。そんな姿を最高峰のプロの舞台でも数多く見せれば、ファンの人気も高まることだろう。

文=小中翔太 写真=BBM

週刊ベースボール別冊秋嵐号『2021ドラフト候補選手名鑑』より
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング