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日本人メジャーの軌跡

1シーズン完全燃焼を貫いた黒田博樹。最後は余力を残して広島復帰/日本人メジャーの軌跡

 

田中将大ヤンキースに入団した2014年は、黒田博樹の最終登板が印象的だった。9月25日のオリオールズ戦。本拠地でのシーズン最終戦。8回を3安打2失点の好投で、5対2とリードして交代した。まだ95球だったから完投は可能だった。完投すれば投球回数がちょうど200イニングとなり、4年連続200投球回となるところだったが1回足りずに終わり、結局これがメジャー最後のシーズンとなった。

先発ローテを守って


ヤンキース時代の黒田


 それでも勝てればよかった。ところが守護神のデービッド・ロバートソンが現在オリックスアダム・ジョーンズに2ランを浴びるなどで3点を失い同点。黒田の勝ち星は消えた。

 ただ、このお陰でヤンキースのファンは最高に盛り上がった。9回裏、一死二塁でデレク・ジーターがサヨナラ右前打を放った。この年限りでの引退を表明していたジーターにとって、この日はヤンキー・スタジアムでの最後の試合だった。その最後の打席でサヨナラ安打だから、チームにとってもファンにとっても最高のフィナーレとなった。

 半面、黒田の好投はすっかり影が薄くなった。快投を演じながらも勝ち星につながらないところが、何となく彼らしいと感じられた。しかも結果的にこれがメジャーでの最後の舞台となった。「まだ投げられるうちに」(黒田)恩返しをするため、オフに広島への復帰を決意したのだった。

 結局メジャーではドジャースとヤンキースで計7年間プレー。通算79勝79敗、防御率3.45の成績であった。

 勝利数は野茂英雄の123勝に次ぐ2位。今年9月8日、ダルビッシュ有(パドレス)に並ばれた。5年連続2ケタ勝利は、田中将大(現楽天)の6年連続に抜かれた。しかし防御率は、150試合以上先発したダルビッシュや田中を含めた5人のなかでベスト。投球内容には安定感があった。

 ドジャース入りした際には3年契約も、その後の4年は1年契約を積み重ね、1シーズン完全燃焼。アメリカの野球に適応し、シーズン中は思い切って練習量を減らして体力を温存するなど、さまざまな工夫を凝らして評価を上げた。

 本人が何より満足しているのは、先発ローテーションを守ったこと。「最低限の目標ではあるが、これが一番難しい」と。広島に戻って2年間プレー。2016年には広島を25年ぶりのリーグ優勝に導き、日米合わせて20年間の現役生活に終止符を打った。「マウンドに登るのが怖くて仕方なかった」と振り返ったが、全力を尽くしたプロ野球生活だった。

『週刊ベースボール』2021年10月4日号(9月22日発売)より

文=樋口浩一 写真=Getty Images
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