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【MLB】今季個人で最大は大谷翔平。WARは誰が最高の選手か判断を助けるデータ

 

リアル二刀流を1年間やり通した大谷は、投げても、打ってもWAR級の活躍であったことをこのWARが高い数字として示している[写真はホームランダービーのとき]


 ベースボールリファレンスのWAR(代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを示す数値)では、仮に代替可能選手だけでチームを構成すると、162試合のシーズンで52勝が期待できると言われる。それに対し、実際にプレーしたメジャー・リーガーたちがどれだけ勝ちを積み重ねられたかだ。

 打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価し、選手の貢献度を示す。2021年公式戦最多勝のジャイアンツで見ると、一番数字が大きいのがブランドン・クロフォード遊撃手の6.1、2番がケビン・ガウスマン投手の5.3、一番数字が悪いのはジェイソン・ボスラー内野手の-0.9。全54選手のWARを合わせると54.4。52勝に加えると106.4で、今季の107勝と近い数字になった。

 一方でシーズン52勝と最も負けたダイヤモンドバックスは、63選手のうち値がマイナスの選手が31人と約半分、最高値はエデュアルド・エスコバルの2.3だった。

 そんなWARで、今季個人で一番数字が大きかったのが大谷翔平の9.0である。リファレンスのショーン・フォーマン氏は「平均的なレギュラー野手、先発投手のWARは2.0前後。大谷は投手で4.1,打者で4.9と、今まで両方で4.0を超えた選手は一人もいなかった。5点でオールスター級、8点でMVP級、彼は合計9点でMVPのシーズンだったと考えられる」と説明する。

 約100個の計算からはじき出す複雑なWAR。フォーマン氏は「二刀流のチームへの貢献度をどう数値化すればいいか、今季はスタッフと何度も話し合い、いくつか計算のやり方をアジャストした」と明かす。興味深い一つの仮定はもし彼がナ・リーグで二刀流だったらどうだったかだ。「ナ・リーグなら打撃面の数値はもっと高くなっていた。というのは代替可能選手との比較なので、ア・リーグの場合比較対象はDHの打者で仮に3Aレベルであってもメジャー・リーガーの平均くらいの打力がある。一方ナ・リーグの場合は、投手との打力比較だから、彼のバットの価値ははるかに大きい。もっともナ・リーグで二刀流なら、投げない日は守備もしなければならなくなるわけで、これが投手としての活躍にプラスになるのかマイナスになるのかは分からないけどね」と指摘した。

 さらに「大谷が両方をやれることで、エンゼルスはリリーバーなり代打専門の野手なりを一人余分にベンチに入れられる。それは数字にしたら小さいかもしれないが確実に存在する価値だ。私たちはこの数字は計算に含めなかったがそれについても話し合った」とのこと。

 惜しくもア・リーグの本塁打王とはなれなかったが、WARでは2位のカルロス・コレアの7.2に大差をつけた。「私たちが目指すのはデータを見る人が、誰が最高の選手なのかを判断する手助けをすること。打点数や本塁打数のようなはっきりした数字ではないが、チームメートなど外因的な要素は排除して、個々の選手の成績を統計的に評価し、チームの勝利にどれだけ貢献したかをはじき出す。使う人が選手について考えるのにベストのデータを目指している」と説明していた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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