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背番号物語

【背番号物語】広島「#11」“最多勝”は20勝の池谷公二郎。九里亜蓮は背番号の“−1”で紀藤真琴のブレークをスピード再現?

 

「12」から「11」にして


今季、背番号を「11」に変更して最多勝を獲得した九里


 プロ野球選手が同じチームに在籍しながら背番号を変更するときには、大きな数字を一気に小さくするというのが一般的なケースだ。広島でいえば、以前に紹介した背番号で挙げると「27」「28」に並んでいた山本浩二衣笠祥雄は、それぞれ「8」と「3」に変更して、いずれも新しい、つまり小さい背番号を永久欠番としている。近年は大きい背番号のまま活躍を続ける選手も少なくないとはいえ、活躍しながらも背番号を大きくしていく選手は一部の強者(?)だけだ(広島にはいるが……)。

 一方、投手が背番号を1つだけ小さくする広島の“お家芸”についても「12」を紹介した際に触れた。過去には津田恒実が「15」から「14」にしたことで“炎のストッパー”として全盛期を迎えたことを考えれば、この“-1”は縁起のいい変更といえるかもしれない。そして2021年、「12」から「11」へと変更したばかりの九里亜蓮がプロ8年目にして初の2ケタ13勝。これで初タイトルとなる最多勝に輝いた。ただ、1986年に同じく「12」から「11」となった高木宣宏は肩痛で苦しむようになったこともあり、この“-1”が他でも踏襲されるかは来たる22年からの九里の活躍に左右されそうだ。

「11」はドラフト1位で11年に入団した福井優也が18年オフに楽天へ移籍したことで欠番となっていたものを、同じ右腕の九里が継承した形。九里とは異なり1年目から「11」を与えられた福井だが、広島では15年の9勝が最多だった。福井の前は助っ人のリレーで、08年から09年を「11」で過ごした右腕のルイスは2年連続で最多奪三振に輝くなどエース格としてチームを支えた。ただ、10年に後継者となったヒューバーは一般的な「11」でも異色の野手で、この“脱線”は成功したとはいえず。ルイスからさかのぼっても、「39」から変更してきた小山田保裕が3年、ドラフト1位で01年に入団した横松寿一が4年と右腕がリレーしていた。横松の前が九里と同じく「12」から「11」に変更した右腕の紀藤真琴だ。

89年から00年まで広島で「11」を着けた紀藤


 違う背番号だが変更2年目に飛躍したのが津田で、いきなり「11」1年目で大台を超えたのが九里。ただ、紀藤は“-1”でもブレークに時間を要している。1984年に「55」でキャリアをスタートさせた紀藤は、87年に一軍デビュー、翌88年には「12」と一気に小さくして、7連続奪三振の好投もあって1年で「11」に。その89年はリリーバーとしてリーグ最多の61試合に投げまくった。だが、その後は前任の高木と同様、故障を抱えるようになる。93年には津田が死去。その闘病を見てきた紀藤はマウンドに立つことの幸せを痛感するようになったという。そこで右ヒジの手術に踏み切る。そして迎えた94年、初の2ケタ16勝。「11」6年目、プロ11年目のキャリアハイだった。

“無冠の最多勝”は低迷期に孤軍奮闘の右腕


紀藤と並ぶ12年間、広島で「11」を背負った池谷


 以降3年連続2ケタ勝利と低迷を始めたチームを支えた紀藤は、2000年まで12年間「11」で投げ続け、中日を経て楽天で引退するまで22年間のキャリアをまっとうした。紀藤に並ぶ12年で最長タイとなるのが池谷公二郎。広島ひと筋、一貫して「11」を背負い続けた右腕だ。現在に続くチームカラーの赤が導入されたのが初のリーグ優勝を果たした75年で、このときプロ2年目だった池谷は“赤ヘル”最初の「11」でもある。72年の秋にドラフト1位で指名され、74年に入団。ダイナミックなフォームからの真っ向勝負で2年目の75年に初の2ケタ18勝、翌76年には20勝で最多勝に。そこから2年連続でリーグ最多奪三振も、77年の48被本塁打はリーグどころかプロ野球の最多として残る。被本塁打は真っ向勝負の勲章と思わせられる豪快な右腕だった。

 最多勝のタイトルホルダーとしては池谷の20勝が現時点では最多だが、「11」のシーズン最多は同じく広島ひと筋で背番号の変更もなかった池田英俊が2年目の63年に挙げた21勝。優勝は経験できなかったが、1年目から5年目まで2ケタ勝利を続けるなど、低迷期のチームで孤軍奮闘を続けた右腕だった。池田の登場までは前任者でもある拝藤宣雄の4年が最長。この拝藤が「11」の右腕としては初代、投手としては2人目となる。

【広島】主な背番号11の選手
池田英俊(1962〜69)
池谷公二郎(1974〜85)
紀藤真琴(1989〜2000)
福井優也(2011〜18)
九里亜蓮(2021〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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