「優勝チームに名捕手あり」――。南海、ヤクルト、阪神、楽天で監督を務め、自らも現役時代は捕手だった名将・野村克也氏はそう野球の本質を突いた。“扇の要”とも表現され重要な役割を担う捕手。果たして、今季のセ・リーグ6球団の「捕手陣」の評価は? 100点満点で採点した。 読売ジャイアンツ
巨人 50点
今季もっとも捕手での先発出場が多かったのは大城卓三で95試合。昨季のベストナイン捕手だが、初めて2ケタ11本塁打を放ったものの、打率は.231と低迷した。“打てる捕手”の期待の高い選手ゆえに不満の残る成績となったが、一方の守備面では盗塁阻止率セ・リーグトップの.447で投手を救った。シーズン途中で出場機会を求めて
炭谷銀仁朗が楽天に移籍し、2番手で
小林誠司が27試合で先発マスクをかぶったが、打率.093と1割に満たない打撃面が足を引っ張った。3試合に先発した
岸田行倫が出番を増やしたものの、大城、小林を突き上げる存在はなく、来季は2人の奮起が待たれる。
東京ヤクルトスワローズ
ヤクルト 100点
日本シリーズMVPまで獲得した中村悠平なのだから、100点満点は当然だ。今季は123試合に出場して、打率.279。二番打者を担うときもあったが、主に六番打者として打線でも力を発揮してきた。今季、ヤクルトが12球団唯一の600得点超(625得点)を記録できたのは、中村が六番に入る切れ目のない打線が構築できたことが大きい。捕手としては、2年連続でリーグワーストだった投手陣をもり立てた。チーム防御率は昨季の4.61から、3.48まで大幅に改善。
山田哲人も「ピッチャーのレベルも上がったし、中村さんのリードもセカンドから見てて違うなって」と話している。日本シリーズでも、攻守で躍動。要所で勝負強さを見せれば、全試合でマスクをかぶって投手陣を支えた。中村の存在なくして、リーグ優勝、日本一は成し得なかったはずだ。
阪神タイガース
阪神 80点
3年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得していた梅野隆太郎が開幕から攻守でチームをけん引した。下位打線のキーマンとして得点圏打率が5割を超える勝負強さを発揮し、前半戦では“首位”独走状態。後半戦に入ると打撃の状態が下降していき、それとともにチームの勢いが落ちていった。投手陣も打たれる場面も目立ち、終盤ヤクルトとの優勝争いが激しくなる中、矢野耀大監督は梅野から
坂本誠志郎へとスタメンマスクを渡した。打撃が梅野よりも劣る坂本だが、抜群のインサイドワークで相手打者を翻ろう。最後の最後まで優勝したヤクルトを苦しめた。捕手2人でつかんだ2位だったが、優勝を逃した部分を考慮し80点とした。
中日ドラゴンズ
中日 70点
先発マスクを一番かぶったのは、言うまでもなく木下拓哉だ。111試合でチームの正捕手として活躍。リーグトップとなる防御率3.22は投手陣を巧みにリードした木下拓の存在があったからだろう。投手2冠となる
柳裕也と今年の最優秀バッテリー賞にも選出されている。11本塁打とパンチ力もあり、バットでの貢献も大きかった。しかし本人も自覚しているように、捕手は勝たなければ評価されない。今季はそこに悔いが残る。木下拓のほかにマスクをかぶったのは
桂依央利、A.
マルティネス、
大野奨太と続く。今後は打力の高い若手の
郡司裕也、
石橋康太がどこまで木下拓の牙城に迫れるかだろう。
広島東洋カープ
広島 75点
今季は
會澤翼が下半身の故障でフル出場できず、捕手での出場は55試合(うち先発47試合)。捕手の最多出場は坂倉将吾の62試合(うち先発54試合)で、
石原貴規も56試合(うち先発32試合)と、ほぼ3捕手併用の形となった。會澤は例年よりやや成績を落としたが、坂倉は一塁手でもチーム最多56試合に先発出場しながらリーグ2位の打率.315。石原も4本塁打を放ったほか、スローイングの正確さも買われて
栗林良吏とのコンビで「抑え捕手」的にも起用されるなど、存在感を増した。打撃を含めた総合力では、ある程度の点数になるが、チーム防御率はリーグ5位の3.81に終わっているだけに、守備面ではまだまだ改善が必要な部分がありそうだ。
横浜DeNAベイスターズ
DeNA 50点
今季一軍でマスクをかぶった捕手は6人。序盤は開幕スタメンの
嶺井博希と、経験豊富な
戸柱恭孝の併用が続いたが、先発投手が失点を重ねてチームは大型連敗。嶺井、戸柱は打撃不振もあり、5月末にはケガから復帰した
伊藤光がスタメンマスクをかぶるようになった。伊藤光は二番に座り、打線のつなぎ役として機能。チームの交流戦3位躍進の原動力となったが、右肩の故障もあり一軍定着はできず。そうした苦しい捕手事情の中で、4年目の強肩捕手・山本祐大が49試合に出場。シーズン終盤には3年目の
益子京右も初スタメンを飾り、若手が経験を積むことができたのは大きかった。
写真=BBM