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川口和久WEBコラム

日本球界最高峰の“ピッチャートライアングル”の一角、佐々木朗希が頂点に立つカギはカーブにある!/川口和久WEBコラム

 

現在の完成度は千賀のほうが高い



 5月6日のロッテ─ソフトバンク戦(ZOZOマリン)は、オリックス山本由伸とともに、現在の球界で最高峰のピッチャートライアングルとも言えるロッテ・佐々木朗希、ソフトバンク・千賀滉大の投げ合いとなった。

 佐々木と千賀の共通点は、「丁か半か」のピッチングだ。博打用語だから使ったらまずいのかもしれないけど、要は真っすぐかフォークかというピッチングだね。

 ともに力ある真っすぐで押し、同じ腕の振りから落とす。打者はどちらかに絞るしかないが、どちらも簡単に打てる球じゃない。

 球速に関しては、真っすぐは佐々木が160キロ超、千賀が150キロ台後半。フォークは佐々木が140キロ台後半、千賀は140キロ前後だ。

 これだけを見たら佐々木が上になってしまうが、もちろん、ピッチャーは球速がすべてではない。

 特に千賀のフォークはお化けフォークとも言われ、球速がありながら落差が大きく質も高い。

 対して佐々木はとにかく速い。真っすぐとの球速差が千賀よりない分、見極めはしづらいが、この日に関してはバラツキがあった。シュート回転したり、落ちなかったりで打たれた球もあった。

 さらに千賀はスライダー、カットボールも駆使していたが、佐々木はカーブを少し挟む程度。あの完全試合と比較したら別だが、現時点のピッチングの完成度は千賀のほうが高い。

 トライアングルのもう一角、山本についても触れておこう。山本も真っすぐは速いが、合わせて球種が多彩で真っすぐと大差がないカットボール、ツーシーム、スプリットが武器だ。

 加えて俺がいいと思うのがカーブ。真っすぐとの球速差としては普通の投手のフォークのように使っているが、カーブの場合、一度、浮かび上がって沈むので打者の目線を上げさせ、ほかの球種を投げる際にも効いてくる。

イニングを長く投げるカギにも


 話を佐々木に戻すが、もう少しカーブを多用するとピッチングがぐっと楽になると思う。

 あの長身で、あれだけ高く足を上げてからカーブを投げたら、バッターは待てずに突っ込むし、目線が高くなって、真っすぐとフォークのコンビネーションがさらに生きる。もっとイニングを消化することもできるようになるはずだ。

 ベンチの指示もあるかもしれないが、今は捕手の松川虎生がさほどカーブのサインを出していない。もしかしたら完全試合の印象もあるのかな。遅い球で打たれたらどうしようかってね。だったらワンバウンドのボールでいいと思って投げさせればいい。打者は手を出さないし、見せ球としても生きてくると思うよ。

 俺の場合、まったく逆だが、ずっと真っすぐとカーブのピッチャーだった。それがある試合中、捕手の達川光男さんから「カワ、フォーク投げてくれ」と突然言われた。投げたことなかったんでそう言ったら「指に挟んで投げればええんや」と(笑)。

 実際、そんなに落差は出なかったが、真っすぐとカーブの中間の半速球ができたことで投球の幅が広がった。

 今、各球団のスコアラーが佐々木のピッチングを分析し、対策を練っているはずだ。すぐにとは言わないが、将来を考えたらカーブを磨くことも必ずプラスになると思うよ。

写真=BBM
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