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なぜロッテ・佐々木朗希は素晴らしい投球ができる?「体幹の強さが驚異の投球を可能に」/元ヤクルト・荒木大輔に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者は高校時代に甲子園で名を馳せ、プロ野球でもヤクルトで活躍、さらに西武、ヤクルト、日本ハムでも指導者経験のある荒木大輔氏だ。

Q.高卒3年目の今季、4月10日のオリックス戦(ZOZOマリン)で完全試合を達成するなど圧倒的な成績を残しているロッテの佐々木朗希投手ですが、なぜこのように素晴らしい投球ができるのでしょうか。(千葉県・匿名希望・27歳)


今季、28年ぶりの完全試合を達成した佐々木朗


A.体幹の強さが最後まで160キロ近い直球を投げることにつながる

 佐々木朗希の完全試合には度肝を抜かれましたね。昨年私は日本ハムの一軍投手コーチを務め、ベンチから佐々木朗の投球を見ていました。確かに力強いボールを投げていましたが2、3回り目になると打者が対応していた印象です。完全試合を達成したゲームでは13者連続三振の日本記録を樹立しましたが、一つひとつのボールの質は高いので、それはまだ理解できます。ただ、体力面に不安がある。力強いボールを100球近く保つイメージはなかったので、完全試合というか、最後まで投げ切るイメージは沸きませんでした。

 やはり筋力が強化されたことが大きいでしょう。特に体幹の強さが驚異の投球を生み出したと思います。投球は下半身、体幹、上半身が連動することにより、ボールに力を伝達して完成する動作です。特に下半身で生み出された力を上半身に伝える役割を担う体幹の強さは、球速や制球力に大きく影響を及ぼします。

 佐々木朗は高く左足を上げる投球フォームも特徴的ですよね。ステップする側の左足を高く上げて軸足に力をためて、着地したときに前方の足にその力を移していくことで速いボールを投げることが可能になる。足を高く上げることで反動が大きくなりますが、そのために体がふらついたり、足を着地させるときに体が開いたり、リリースが一定しなかったりしたらまったく意味がありません。そうならないためには、やはり体幹の強さが必要となるのです。

 佐々木朗はまだ体が細いように見えますが、それにだまされてはいけません。例えば足の速い選手も基本的には体幹が強い。だから、体が大きくない日本ハムの五十幡亮汰でも実は打球を飛ばす能力はあるのです。それほど、最大限の出力を実現させるためには体幹の強さが重要となってくるのです。そうでないと完全試合のときのストレートの平均球速は159.8キロだったそうですが、そのような投球はできません。

 これまで私が間近で実際に目にしてきた中で、No.1のボールの力強さを誇ったのは渡米前に投手コーチとして接した西武の松坂大輔でした。ただ、制球力は良くなかった。逆にボールが暴れることが持ち味でもありましたが、ベンチでは試合が壊れそうな危険な感じを抱くことも多かったです。でも、佐々木朗の場合はベンチが常に安心して見ていられるのではないかと思います。トラックマンの計測で回転数などが、どれくらいの数値をたたき出しているかも非常に気になりますね。

 よく、「投げる筋力は試合でつくっていく」という言い方をしますが、今年の佐々木朗はその段階。実戦で投げていくことで、さまざまな経験を重ね、ピッチングも成熟してく。今後、どのような進化の過程を経ていくのか、非常に楽しみです。

●荒木大輔(あらき・だいすけ)
1964年5月6日生まれ。東京都出身。早実から83年ドラフト1位でヤクルト入団。96年に横浜に移籍し、同年限りで引退。現役生活14年の通算成績は180試合登板、39勝49敗2セーブ、359奪三振、防御率4.80

『週刊ベースボール』2022年5月30日号(5月18日発売)より

写真=BBM
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