5月上旬にケガで戦線離脱
出場機会を模索するため、今オフに海外FA権を行使するか注目が集まっているのが、巨人・中田翔だ。
今季は開幕から五番で勝負強さを発揮してきた。打率.301、7本塁打、15打点の好成績をマークしていたが、5月4日の
ヤクルト戦(東京ドーム)で走塁の際に負傷交代。右太もも裏肉離れで戦列を離れたことが、大きな痛手だった。
大久保博元打撃チーフコーチは週刊ベースボールのコラムで、「翔の打撃で今年目立っていたのは、追い込まれてから右方向へ打つ打撃が増えたことでした。
日本ハム時代にはそういう打撃はしていなかった。なぜそういう打撃をするようになったのか――。理由は和真(
岡本和真)の存在があるからです。日本ハム時代は、翔一人で大きな打球を打たないといけなかった。しかし、巨人には和真という同じ右の大砲がいる。そのためにギアを上げて、無理に大きな打球を打ちにいく必要がなかったんです。それが打席での余裕につながっていました」と綴っていた。
さらに「打率も3割に行っていましたし、4月29日の
広島戦(東京ドーム)では、『行きます』と言って本当にサヨナラ2ランを放っていました。あのときはコーチながらついつい気持ちが出てホームまで出て行っていました。そういう打撃のいい状態が続いていたので、今年はタイトルも狙えるなと思っていましたし、それが和真にもいい影響を与えるかもしれないと思っていましたが……」と振り返っていた。
今後の野球人生を考えると……
5月下旬に復帰後も万全のコンデイションを取り戻せず、
坂本勇人が三塁にコンバートされ、岡本和が一塁に回った影響もあり、後半戦以降はスタメン出場の機会が減少。9月20日に腰痛で登録抹消されると一軍復帰は叶わず、92試合出場で打率.255、15本塁打、37打点と不完全燃焼に終わった。
スポーツ報知の報道によると、中田翔は昨オフに巨人と3年契約を結んだが、1年ごとに契約の見直しや破棄ができるオプトアウトの条項がついていることからFA権の行使が可能だという。
スポーツ紙記者は「移籍となれば年俸3億円からの減俸は避けられないが、今後の野球人生を考えたときにもう一度花を咲かせたいと考えたら、他球団のほうがスタメンのチャンスが多いかもしれない。人的補償が必要なBランク、近年は故障で離脱する機会が増えていることで評価が分かれるが、シーズンを通じて試合に出続ければ打率.280、20本塁打は十分にクリアできる。一塁の守備のうまさも球界屈指です。未知数な新外国人選手を獲得するより攻守で計算できる選手であることは間違いない」と分析する。
出場機会がさらに減少する可能性も
来季も一塁は岡本和が守る公算が高い。また、中田翔の愛弟子である
秋広優人も後半戦は一塁を守る機会が多かった。中田翔が残留した場合は出場機会が今季より減少する可能性がある。一方で他球団を見渡すと、一塁を固定できていないチームが多い。リーグワーストの390得点で球団初の2年連続最下位に低迷した
中日は、
ダヤン・ビシエドが一塁でチーム最多の83試合にスタメン出場も、打率.244、6本塁打、23打点と振るわず。本職が一塁ではない
細川成也、
宇佐見真吾が守るケースが少なくなかった。
DeNAの一塁は
ネフタリ・ソトが3年契約最終年の今季109試合出場で規定打席に届かず打率.234、14本塁打、50打点。本塁打王を2度獲得した実績を持つ長距離砲だが、来季の去就が不透明だ。また、広島、
ロッテ、
楽天もシーズンを通じて一塁のレギュラーを固定できなかった。
中田翔は日本ハムの四番として長年活躍し、打点王を3度獲得。もちろん、巨人に拾ってもらった恩義は感じているだろう。来季も残留してプレーする可能性は十分にある。
阿部慎之助新監督の下で巨人が新たな船出を切る中、中田翔の決断が注目される。
写真=BBM