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【大学野球】V戦線に踏みとどまった法大 再認識した学生野球として大事な「教え」

 

「生活が変われば、野球が変わる」


法大の主将・今泉は東大3回戦で先制適時打。この日は3安打を放ち、今季2つ目の勝ち点奪取に貢献した[写真=矢野寿明]


[東京六大学リーグ戦▼第5週]
10月10日(神宮)
法大8-2東大(法大2勝1敗)

 過去に戻ることはできない。

 結果を覆すこともできない。

 法大は開幕カードの立大戦を連勝で、幸先良く勝ち点を挙げたものの、続く慶大戦を1勝2敗1分で勝ち点を落とした。

 2020年春以来のV奪還を狙う上で、あとがなくなった東大戦。法大は1回戦で先勝したが、2回戦を落とした。シーズン3敗目。過去のデータからも「勝ち点4、3敗」がリーグ優勝の最低ラインだ。加藤重雄監督が言う「紙一重がつながっている」状況となった。

 窮地に立たされた主将・今泉颯太(4年・中京大中京高)は立ち上がった。翌日の3回戦を控え、技術を飛躍的に向上させることは難しい。では、チームとして何ができるのか。

「野球の前に、生活の部分を見直した。生活が変われば、野球が変わる」

 まずは、合宿所の清掃に着手。より気持ちを込めた。翌日の3回戦は、雨天中止になった。

「室内での調整になりましたが、準備、片付けをしっかりやろうと言ってきました。練習に取り組む態度と、1球にかける思いです」

 焦っても仕方ない。迷ったときほど、原点に立ち戻ることが必要。加藤監督が強調した「無心」で、ワンプレーに集中した。1回裏、主将・今泉が先制打を放って主導権を握ると、序盤2回で8得点と優勢に進めた。法大は8対2で勝利し、V戦線に踏みとどまった。

救世主となった3年生左腕


法大の3年生左腕・吉鶴は第5週を終えて、防御率0.00でリーグトップに立っている[写真=矢野寿明]


 春2位の原動力となったプロ注目左腕・尾崎完太(4年・滋賀学園高)と157キロ右腕・篠木健太郎(3年・木更津総合高)の調子が上がらない中で、法大の救世主となっているのが151キロ左腕・吉鶴翔瑛(3年・木更津総合高)である。

 今季2試合目先発となった東大3回戦では、6回2安打無失点。テンポの良い投球で三塁を踏ませず、9奪三振と圧倒した。夏場はストレートの球威アップと、投げるイニング数よりも多い、奪三振数を目指してきたという。

 力感のないフォームから投じられる真っすぐには伸びがあり、相手打者は差し込まれる。変化球は得意とするスライダーを軸に、カーブ、チェンジアップ、ツーシームを低めに集める。この日はカットボールを使うことなく、配球を組み立てることができた。

「自分のボールで三振を取るのは、一番、気持ちが良い。奪三振数が増えるほど、調子が上がっていく。自分の投球ができれば、抑えられる自信がありました」

 このコメントを横で聞いていた投手出身の法大・加藤監督は「三振は、ベンチも安心して見ていられる。前に飛ばされなければ、得点にはならない」と手放しで褒めたたえた。

 吉鶴は元プロ野球選手の吉鶴憲治氏(現ソフトバンク三軍バッテリーコーチ)を父に持ち、勝負魂がDNAとして継がれている。第5週を終え、防御率0.00(18回1/3無失点)でリーグトップに立った。イニングを上回る20奪三振と、求めてきた取り組みが形になっている。

 法大は第6週(対早大)、第7週(対明大)と終盤に3カード連続というタフな日程が組まれている。東大2回戦の黒星から、学生野球として大事な「教え」を再認識した。もう、失うものはない。シンプルに「対校戦」の2カードで、勝ち点を奪取するだけである。

文=岡本朋祐
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