投打に充実する戦力
チームを38年ぶりの日本一に導いた阪神・岡田監督
ストーブリーグで注目されるのは主力選手の移籍だ。FA市場では
西川龍馬が
広島から
オリックス、
山崎福也がオリックスから
日本ハム、
松井裕樹が
楽天からメジャー挑戦へ。
山本由伸(オリックス)、
今永昇太(
DeNA)、
上沢直之(日本ハム)とエースたちがポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指している。そして、出場機会を求めて
巨人を自由契約となった
中田翔は
中日に入団することが決まった。
各球団が積極的な戦力のテコ入れを敢行する中、外部補強のニュースがメディアで報じられず静かなオフを迎えているのが、今季38年ぶりの日本一に輝いた阪神だ。投打の陣容を見ると、補強に動かない理由が納得できる。リーグトップのチーム防御率2.66をマークした投手陣は先発、救援ともに質、量で他球団を圧倒する。今秋のドラフトでは1位・
下村海翔(青学大)、2位・
椎葉剛(四国IL/徳島)、5位・
石黒佑弥(JR西日本)、6位・
津田淳哉(大経大)と即戦力の4投手を獲得。来季は一軍定着に向け、今年以上のハイレベルな争いが予想される。
野手陣も脂の乗り切った選手たちがそろっている。一塁・
大山悠輔、二塁・
中野拓夢、三塁・
佐藤輝明、遊撃・
木浪聖也の布陣で、
小幡竜平、
渡邉諒、
糸原健斗が控える。捕手は
坂本誠志郎、
梅野隆太郎の併用で投手陣を牽引する。外野陣は不動のレギュラーと言えるのは中堅・
近本光司のみだが、右翼は
森下翔太が勝負強い打撃で夏場以降にスタメンに定着。左翼が最大の激戦区だ。
シェルドン・ノイジー、
ヨハン・ミエセス、内外野を守る
小野寺暖、若手成長株の
前川右京がしのぎを削る。
「現有戦力が充実していますし、
門別啓人、
井坪陽生、
野口恭佑ら将来の主力候補たちがファームで順調に力をつけている。他球団の主力選手を獲得する必要がないでしょう。
岡田彰布監督が就任して野球の質が上がりましたし、リーグ連覇を目指す来季も優勝争いの大本命であることは間違いない」(スポーツ紙記者)
黄金時代へOB会長の指摘
現役時代に代打の切り札として活躍し、1985年に日本一を経験した
川藤幸三OB会長は週刊ベースボールのインタビューで、阪神が来年以降に黄金時代を築けるかについて質問が及ぶと、「“できるのか”ではアカン。つくらないといけない。1回は勢いもあって、優勝できるかもしれん。でも、なぜ連覇が難しいのか。選手も新人王を獲っても2年目のジンクスに陥ってしまうのは、相手に研究され尽くしてしまうから。チームもそれと同じ。それをかいくぐっていく必要がある」と力説。
FA補強に頼らないチーム編成を行っていることについて、「一番大事なのはそこ。出来上がった選手を獲るのではなく、金の卵を戦力として育てていく。阪神にも好素材はまだまだ二軍にたくさんおる。そいつらの成長は必要。さらにレギュラーだって若い。もっともっと伸びていく余地はある。三番・森下(翔太)、四番・大山、五番・佐藤(輝明)のクリーンアップも並びがこのままでいいわけでもない。大山一人が四番ではないやろ。競争して森下や佐藤が四番を勝ち取ったって構わないはず。ほんまもんの大黒柱になろうと思うなら、てめえで努力をするしかない」とチーム内の競争を求めた。
16年以降のセ・リーグの優勝球団を見ると広島が3連覇、巨人が2連覇、
ヤクルトが2連覇といずれも複数年連続で頂点に立っている。もちろん、相手球団のマークが厳しくなる中でリーグ連覇を達成するのは険しい道だ。阪神は過去にリーグ連覇を飾った経験がない。来季も勝利の美酒を味わい、新たな歴史を刻めるか。
写真=BBM