週刊ベースボールONLINE

社会人野球リポート

【社会人野球】2年連続最多勝のHonda熊本・片山雄貴 「まさか同期入社の2人で、この舞台に立てるとは……」

 

Honda鈴鹿に同期入社の2人


Honda熊本は3選手が受賞。左から石井はベストナイン[二塁手]、片山は最多勝利投手、山本はベストナイン[外野手]と最多打点賞を受賞した[写真=田中慎一郎]


 2023年度社会人野球年間表彰が12月12日、東京都内のホテルで行われた。社会人日本選手権で準優勝を遂げたHonda熊本は個人賞を含めて3選手が受賞した。

 エース右腕・片山雄貴(駒大)は6勝を挙げ、2年連続2回目の最多勝利投手賞を受賞した。

「2年連続ですが、満足していません。さらにレベルアップして来年、再来年もこの会場に帰って来られるようにしたい。Honda熊本としては準優勝が最高成績。その一つ上の日本一を目指して頑張っていきたいと思います」

 入社8年目の30歳。感慨深いものがあった。

「まさか同期入社の2人で、この舞台に立てるとは……。夢のよう。不思議な感覚です」

 片山は2016年にHonda鈴鹿入社。当時の投手スタッフは層が厚く、登板機会に恵まれなかった。より多くのチャンスを得るため、社会人2年を終え、Honda熊本に転籍した。福岡県出身の片山は九州の水が合った。移籍後はチームのエースとして活躍し、21年の都市対抗準優勝に貢献し、久慈賞を受賞。今年は30歳にして初めて日の丸を背負い、アジア競技大会では銅メダルを獲得している。

 片山の移籍から2年後、Honda鈴鹿から転籍してきたのが、同期入社の石井元(明大)だった。石井も遅咲きの選手である。

「準優勝した21年の都市対抗では、3安打がすべて単打。ホームランを打たなヤバイと思いまして……」

 渡邊正健監督(明大)が指揮するHonda熊本はウエートトレーニングを強化ポイントとし、攻撃力を看板としたチームカラーを目指してきた。どこからでも一発がある山本卓弥(亜大)、稲垣翔太(明豊高)、古寺宏輝(関東学院大)の上位打線は、各チームから恐れられている。石井も生き残りをかけて、打撃フォームの修正に着手した。

「チームで最も軽いバット(860グラム)を使い、バットを肩から出すイメージで振っています」。それまではヘッドが下がり気味だったが、ヘッドを立てたまま、バットを振り下ろす。過去の石井の打撃を知る関係者からすれば、別人となったという。この日の表彰でベストナイン(外野手)と最多打点賞を受賞した山本からは、飛ばす技術を伝授された。

「昨年、入社7年目にして、初めて東京ドームで本塁打を打つことができました」

石井は今季限りで引退


 入社8年目を前にして、渡邊監督と面談。23年を最後に、ユニフォームを脱ぐこと決めた。都市対抗1回戦で本塁打を放ち、日本選手権2回戦でも京セラドームでアーチを描けた。日本選手権では21打数7安打で準優勝に貢献。入社8年目で初のベストナイン受賞と、現役引退に花を添える形となったのである。

「すがすがしい気持ちです。携わっていただいたすべての関係者、監督、コーチ、チームメート、家族に感謝しかないです。片山も苦労しているのを見てきたので、この場に立たせていただき、めちゃくちゃうれしいです」

 石井は今後、鈴鹿製作所で社業に専念する。

「まずは仕事をしっかりやります。いずれ、チャンスがあれば指導者として戻ってきたい。野球で生きてきたので、いつか恩返ししたい」

 野球部の現場から一歩離れた立場で、社会人野球の魅力を伝えていきたいという。

「あまり知られていませんが、社会人野球は本当に面白いんです。広めていきたい。周囲を巻き込んでいきたいと考えています」

 来季は入社9年目、石井の思いも背負ってプレーする片山も「普及」に情熱を燃やす。

「知名度が高いとは言えません。明るい話題を九州に!! 九州の熊本から社会人野球の面白さを、発信していきたい。近隣の方に応援していただけるような野球部にしたいです」

 現場で試合観戦すれば、必ず、社会人野球の虜になるはず。1球に魂を込め、30歳を過ぎた大人が必死になってボールを追う姿に、誰もが感動する。「日本選手権決勝前、もう腕が上がらなかったんです(準決勝で完封するなど3試合で2勝)。でも気持ちで投げられるんですよね(救援で終盤3イニング)」。片山は気迫を前面とした投球を24年も貫いていく。

文=岡本朋祐
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング