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センバツから完全移行…反発を抑えた新基準の金属バット 対策として出た3つの傾向

 

対応に追われている現場


2023年秋の公式戦を終えた各校は、24年シーズンに向け、新基準の金属バットの事前準備に追われている[写真=宮原和也]


 投手の安全面などに配慮し、反発を抑えた新基準の金属バット。2022年2月、日本高野連理事会で導入が決定した。23年までの2年間を旧基準と新基準の併用期間とし、来春のセンバツ甲子園から完全移行され、全国各地の春の都道府県大会でも適用される。

 現行バットの最大直径67ミリから64ミリへ、打球部の素材の厚さを3ミリから4ミリに変更。従来よりも細く、肉厚にすることで反発を抑えることができるという理屈だ。打球速度が遅くなり、投手のケガのリスクが減ることが期待されている。また、昨今の高校野球界で顕著となっている「投高打低」のバランスを見直すきっかけとしても注目される。

 日本高野連では今年2月、加盟校の経済的負担を考慮し、各校に2本ずつの配布を決定。1本は学校の希望メーカー、1本はランダムに振り分けていた。なお、12月にはさらに1本、追加での配布が決定し、計3本となった。

 現場は対応に追われている。メーカーにもよるが、従来とは打球音が明らかに異なる。「カキーン!」であったのが、芯に当たった際は「キーン!」。一方、芯を外し、詰まった際にはやや大げさに「ドスン!」と、かつての金属音はほぼしないのが第一印象だ。複数の来春のセンバツ候補校の指導者、選手に取材したところ、対策として3つ傾向が出た。

[1]ディフェンシブなチームは「追い風」
「バットの芯に当たらないと飛ばない」というのが共通の意見。従来のバットのように、芯を外したり、詰まった当たりで、長打になるようなケースはほぼ見られないという。かつてのような「事故」は撲滅されることが予想。最少失点に抑え、少ない得点で逃げ切るチームにとっては、勝機が広がる。外野の守備位置についても長打力が減ることが予想され、再考が必要。また、芯を外した打球の処理による、内野守備の強化が求められる。

[2]打力強化
 ディフェンス面を疎かにするというのではなく、投手を中心とした守りを固め、走塁を含めた機動力のレベルアップは大前提としてある。新基準バットを使いこなすため、本塁打は期待できないが、外野の間を抜く、強い打球を打つためのトレーニング、スイング強化に励む。全国大会で上位進出を実現させるためには、最終的に「打力の差」が明暗を分けるという、あくまでも攻めの姿勢である。

[3]何も変えない
 すべての学校が同じ条件で試合を行うのであり、与えられた状況下で順応する。「打球が飛ばない」という前評判が一人歩きしていることを危惧。バット変更を過剰に意識せず、例年どおり、攻守走、すべての分野においてレベルアップに努めていく。あくまでも平常心を保ち、日々の練習、取り組みに集中する。

 いずれにしても、新基準のバットに一刻も早く慣れることが必要だ。ある学校では、室内練習場にマシンを設定し、バットを振り込む場を設定している。ただ、相当なストレスに感じている選手も多く、場合によっては、金属バットよりも振り抜きやすいと判断し、木製バットを使用する選手が出てくるかもしれない。

 過去の金属バットの規格変更の際も、移行のタイミングではいろいろと話題に上がっていたが、時間が解決するはず。ただ、センバツはシーズン最初の公式戦。3月第1土曜日(24年は3月2日)の解禁以降、数試合の対外試合を積んでくるが、混乱は避けられないだろう。高校野球は変わるのか──。オフシーズンの過ごし方が、例年以上に大事になる。

文=岡本朋祐
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