189センチの長身を生かした角度のあるストレート。それが山崎颯一郎の武器だ。
ほかの長身選手と比べても、山崎颯の球は一段高いところから鋭角にミットに突き刺さる。捕手の
伏見寅威は「颯一郎は上からバンッと強くはたける。ああいう投手はあんまりいない。可能性を感じます」と言う。
「せっかく身長があるんで、それを生かした投げ方にしようかなと思って」と19歳のルーキーは無邪気に話す。敦賀気比高時代からその投球は高く評価されていたが、
オリックスでハンマーを使った練習を取り入れて以降、より高い位置からダイナミックに投げられるようになった。股を割り、タイヤに向かって、薪割りをするようにハンマーを振り下ろす。その際の体の使い方が、山崎颯の理想とする高さを生かした投げ方に似ていたという。
「はまりましたね。それをやるようになってからフォームのバラつきがなくなってバランスがよくなり、球もよくなりました」
以前よりも角度がつき、球速も約4キロアップ。最速は149キロをマークした。
また、バレーボールをアタックするように打ちつける練習も行う。ストレートは「キャッチャーの頭をアタックするイメージ」。カーブは「キャッチャーの頭をチョップするイメージ」だと独特の感性で説明する。
一方で課題は明確。スタミナだ。8月20日のウエスタン・
広島戦(由宇)では6回まで4安打2失点と好投も7回に崩れた。
「下半身の踏ん張りがきかなくなり、投げる時に体が横回転してしまい、角度がなくなる。力も球に伝わらないのでとらえられてしまった。1回の投球フォームを9回まで続けられたら、だいぶ打たれなくなると思います」
同じ高卒ルーキーの山本由伸が、8月20日に一軍初登板を果たし、同31日にプロ初勝利を挙げたことは、大きな刺激になった。
「同い年であんなに完成されている投手は見たことない。でも、自分もやらないかんな、負けとったらいかんなと思いますね」
負けず嫌いに火をつける身近な存在が、山崎颯の成長をますます加速させるに違いない。
取材・文=米虫紀子 写真=BBM