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6月28日の中日戦でサヨナラ本塁打を放った山田哲人=背番号1=を迎える燕ナイン


勝負強さが戻った主砲・バレンティン



 打線で目を引くのは、バレンティンの好調ぶりですね。ここまでリーグトップタイの17本塁打を放っていますが、殊勲の一打も多く、勝負強さが際立っています。バレンティンを四番に固定することで、昨年は中軸だった山田哲人の一番起用も可能となり、相手のマークも分散されました。攻撃のバリエーションが増えましたね。

 バレンティンを含めて故障者が続出した昨季は、シーズンを通して試合に出続けたのは山田哲と坂口智隆くらいでした。山田哲は昨季、不調のまま終わりましたが、それには理由がありました。かかと重心というか、ピッチャーが投げる球に対して腰を引く姿が目についていたんです。ですが、今季はしっかりと踏み込んでいけている。打率も一時は3割を超えましたし、ホームランもすでに16本出ています。値千金のサヨナラ本塁打もありましたし、今後、さらに調子を上げていく可能性は高いでしょう。

 また、坂口も春季キャンプからシーズン開幕後も良い状態をキープできています。起用する側からすれば安定感のある、計算できる選手と言えます。青木宣親が7年ぶりに復帰して、川端慎吾畠山和洋も故障から戻ってきました。特に川端を中軸に固定できれば、相手にとってはスキのない、嫌らしい打線となります。

役割が明確になり安定した石山


 投手陣の頑張りも見逃せないところです。確かに開幕当初は先発の駒がそろっておらず、特にエース・小川泰弘が右ヒジ疲労骨折からの回復途上で不在だったことが大きかった。厳しい戦いが強いられるのは予想できたことでした。それでも5月に小川が復帰すると、ここまで4勝。ブキャナンもすでに5勝をマークしており、左腕のハフもここまで1勝5敗と勝ち星にこそ恵まれていませんが、ある程度計算できる投手です。

 好調の要因として一番に挙げられるのは救援陣の奮闘でしょう。秋吉亮の不調による二軍降格は残念でしたが、左腕の中尾輝近藤一樹から新クローザーの石山へとつなぐ“勝利の方程式”が確立できていることが大きい。先発左腕の石川雅規は38歳のベテランで、3周り目あたりになるとどうしても苦しくなりますが、今季は盤石な救援陣がいる。これにより先発投手が5、6回まで全力で飛ばし、バトンを渡すことが可能になっています。

 新クローザーの石山は、明確な役割を与えられたことで力を発揮していると言えるでしょう。9回固定がはまりましたね。昨季、中継ぎでは連投続きで球のスピードが落ちることもありましたし、何度か肩をつくりながら投げないことあった。勝ち試合の9回という明確なポジションがあるからこそ、調整もスムーズにできているはずです。

勝負の夏場へ投手起用がカギ


 交流戦前は首位の広島に3勝8敗と分が悪かったのですが、広島も若い先発投手が苦しんでいますし、つけ入るスキは十分にあるでしょう。何より、このチームをたたかなければペナントレースも盛り上がらない。ですが、“弱者の兵法”などと考える必要はありません。少なくとも打線の厚みでは、ほかの5球団とそん色はない。がっぷり四つ組んでも十分に戦えるはずです。

 気掛かりは救援3人の登板過多です。3人ともすでに30試合登板を超えており、疲労の蓄積はあるでしょう。先発では力を発揮できなかった原樹理が中継ぎに転向し、抑えに定着できなかったカラシティーは先発、ロングリリーフ両面の適性も見せています。さらにはセットアッパーとして期待される新外国人・ウルキデスも入団しました。故障明けの星知弥も二軍で調整中ですし、プラス要素は確かに存在します。

 野手にも30代の“おじさん”が多いですから(笑)、キャプテンの中村悠平西浦直亨といった20代の選手たちの奮起が不可欠。彼らがナインを引っ張っていければ、期待はさらに高まりそうです。

写真=榎本郁也

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