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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

広島・赤松真人を笑顔にするチームメートの優しさ

 

三軍で練習を積み、復帰を目指す赤松


 8月下旬、広島赤松真人の取材のために、三軍の大野練習場を訪れた。黙っていてもじっとりと汗が浮かぶ暑さの中、半そでの赤松はバッティング練習やトレーニング、ランニングなどを、時おりコーチらと談笑しながら行っていた。

「(取材は)食事をしてからで大丈夫ですか?」と確認した赤松は、寮の食堂へ。スタッフとともに食事を取る姿は、大病を患ったことを忘れさせるようだった。

 昨年12月に胃がんを公表した赤松。1月に摘出手術を受けたがリンパ節への転移が判明し、抗がん剤治療を開始。約半年後の7月11日に練習に復帰したばかり。インタビュー中も暗い表情はない。だが、実際に話を聞くと、やはり語られる言葉はこちらの想像していた以上に過酷だった。

 筋力の低下により昨年使っていたバットが重く感じられること。抗がん剤治療の影響により手にしびれがあること。それでも30分にわたり、現在の状況を語ってくれたことはただただ、頭が下がる思いだった。

 その中で、とりわけ笑顔を見せてくれたエピソードがあった。闘病中、特に頻繁に連絡をしてきたという菊池涼介についてだ。

 ときには試合開始前にも電話してきたという菊池。しかしその際は赤松の妻・寛子さんに「今、連絡してもいいですか?」と事前に確認をしてから、赤松と話すようにしていたそうだ。

 抗がん剤の副作用で、「タイミングによっては話せるような状態ではないときもあった」という赤松。電話では明るい口調で冗談を口にしていた菊池だが、その裏ではしっかりと、赤松への配慮を忘れてはいなかったのだ。

 復帰を目指し、汗を流す赤松。背番号38が再びマツダ広島で躍動する日を待ち望んでいるのは、ファンだけではないのである。

文=吉見淳司 写真=筒井剛史

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