徐々に平常を取り戻しつつあるとはいえ、依然、コロナ禍でのスカウティング活動が続きそうだ。選手をチェックする限られた機会&情報を選りすぐって、優れた素材を見抜くスカウトの眼力は、ますます重要となる。セ・リーグのスカウト布陣をチェックしながら、補強ポイントを占う。 ヤクルト・黄金時代の再来に向けて
小川淳司GMの下、2022年の活動がスタート。即戦力投手の上位指名が長年続いているが、その流れは今年も続きそうだ。昨年入団した
木澤尚文と
山野太一の両大卒投手は即戦力として期待されるも結果を残せず。過去10年のドラフト指名で規定投球回に達した投手は
小川泰弘のみで、苦しい状況が続く。一方野手では、
山田哲人、
村上宗隆の高卒ドライチ選手が球界を代表する選手に。また
元山飛優ら1年目から活躍する野手の存在も光る。
【2022補強ポイント】即戦力投手中心も大型野手獲得に期待 最重要課題であった先発投手陣は
アンドリュー・スアレス、
A.J.コールの新外国人補強で対応した。
奥川恭伸、
高橋奎二の両エース候補が飛躍すれば、これまで続いてきた即戦力投手の上位指名は、大型野手へと変わるかもしれない。昨年は、
塩見泰隆がシーズンを通して活躍し、チームの柱になった。これに続く野手獲得に期待だ。
■編成&スカウト一覧 氏名=主な担当選手 ◎小川淳司
☆
伊東昭光 ★橿渕聡=
山下輝(法大・投)
◇
中西親志=
柴田大地(日本通運・投)
◆
松田慎司=村上宗隆(九州学院高・内)
押尾健一=
小森航大郎(宇部工高・内)
斉藤宜之=小川泰弘(創価大・投)
丸山泰嗣=
清水昇(国学院大・投)
阿部健太=奥川恭伸(星稜高・投)
◎=ゼネラルマネージャー、☆=編成部部長兼編成グループチーフ、★=スカウトグループ次長デスク、◇=スカウトグループ次長、◆=スカウトグループ課長 阪神・新体制でさらなる戦力確保へ
昨年は
佐藤輝明、
伊藤将司、
中野拓夢が活躍し大成功といえる指名だった。
畑山俊二統括スカウトの体制となり2年目を迎える。昨年4月から嶌村聡球団本部本部長となり、今年1月からは宮脇則昭編成ディレクターと新体制で臨んでいる。今季は高卒154キロ右腕の
森木大智(山本スカウト担当)を1位指名し、大学からは即戦力投手を3人獲得。育成1巡目には大きな可能性を秘めた
伊藤稜(筒井スカウト担当)を指名するなどバランスのいいスカウティングを見せている。
【2022補強ポイント】若手にさらに刺激を与える二塁手の即戦力が欲しい レギュラーの中心が20代後半から30代前半と脂がのってきたチーム編成の中、懸案事項としては攻守に期待できる二塁手が欲しいところだ。若手候補は多くいるのだが、決め手に欠ける部分もあり、内野手全体にも刺激を与えるために、中野拓夢のような下位指名でもレギュラーを獲るような勢いのある選手を獲得したいところだ。
■編成&スカウト一覧 氏名=主な担当選手 ★嶌村聡
□宮脇則昭
◎畑山俊二=
藤浪晋太郎(大阪桐蔭高・投)
熊野輝光=
榮枝裕貴(立命大・捕)
山本宣史=森木大智(高知高・投)
平塚克洋=
大山悠輔(白鴎大・内)
葛西稔=
馬場皐輔(仙台大・投)
吉野誠=
高橋遥人(亜大・投)
筒井和也=
湯浅京己(BC/富山・投)
渡辺亮=佐藤輝明(近大・内)
前田忠節 ★=常務取締役兼球団本部本部長、□=球団本部次長(編成ディレクター)、◎=球団本部次長(統括スカウト) 巨人・よりスムーズな連係に
昨年はスカウト部参与だった
水野雄仁氏が、今年はスカウト部のトップに就く。2019、20年にはコーチも歴任。近年の現場経験を持つ同氏が、部長としてより責任ある立場で広く全国を回れば、チームでの活躍が見込める人材をさらに発掘することが可能になるだろう。編成権を持つ
原辰徳監督との連絡もよりスムーズになることが見込まれ、これまで以上に現場のニーズを把握することで、その意向にマッチした好選手をリストアップすることができる。
【2022補強ポイント】坂本、岡本に続く次世代レギュラー候補 ここ数年は即戦力投手の獲得に力を注いだ。一昨年はドラフト1位の
平内龍太や同2位の
山崎伊織、昨秋も1位の
翁田大勢を筆頭に上位3位まで指名。2019年1位の
堀田賢慎も含め、若い投手陣がそろってきた。次世代のレギュラー定着が期待できる野手の獲得が必要になる。主将の
坂本勇人、
岡本和真に続く柱になれる選手が欲しい。
■編成&スカウト一覧 氏名[担当地区]=主な担当選手 ●水野雄仁
★榑松伸介
☆武田康[中国、四国]=
戸郷翔征(聖心ウルスラ学園高・投)
○
渡辺政仁[北陸、関西]=
増田大輝(四国IL/徳島・内)
○
柏田貴史[北海道、関東]=
高橋優貴(八戸学院大・投)
○
織田淳哉[関東、九州]=
太田龍(JR東日本・投)
内田強[北関東]=山崎伊織(東海大・投)
木佐貫洋[関東、東海]=
直江大輔(松商学園高・投)
脇谷亮太[関東]=平内龍太(亜大・投)
円谷英俊[東北]=
伊藤優輔(三菱パワー・投)
岸敬祐[関西、四国]=翁田大勢(関西国際大・投)
●=スカウト部長、★=スカウト部次長、☆=スカウト部課長、○=スカウト部主任 広島・変わらぬ布陣で確かな目利き
長きにわたって数々の名選手を発掘してきた
苑田聡彦スカウト統括部長の下、担当地区の一部変更はあったものの、今年も変わらない、連携の取れた布陣で活動をしていく。2019年の
森下暢仁、20年の
栗林良吏と「一本釣り」に成功した投手が2年連続で新人王に輝いただけでなく、4球団競合の末に獲得した
小園海斗も3年目の昨季、出場試合数を増やして台頭。ここ数年は特にスカウト陣が高く評価した個々の能力が、しっかりとチーム内で生かされている。
【2022補強ポイント】シーズンの戦いもリンクさせて 昨秋もシーズン中に振るわなかった投手陣、特に左腕に、
鈴木誠也のMLB移籍を見越しての右の長距離砲と、現チームの足りないところにハマる即戦力候補を多く獲得した。ここ数年ドラフトの軸となっている所属チームで実績を残す大学生・社会人投手をマークしつつ、シーズンの戦いぶりとリンクした形で候補者を絞っていく。
■編成&スカウト一覧 氏名[担当地区]=主な担当選手 ★苑田聡彦=
會澤翼(水戸短大付高・捕)
☆
白武佳久[中国・四国]=
中村奨成(広陵高・捕)
近藤芳久[北海道・東北]=
大道温貴(八戸学院大・投)
高山健一[関東・北信越]=
玉村昇悟(丹生高・投)
田村恵[全国]=
大瀬良大地(九州共立大・投)
松本有史[東海]=
菊池涼介(中京学院大・内)
尾形佳紀[関東]=森下暢仁(明大・投)
鞘師智也[近畿]=小園海斗(報徳学園高・内)
末永真史[九州]=
島内颯太郎(九州共立大・投)
★=スカウト統括部長、☆=スカウト部長 中日・東海地区中心に全国マーク
松永幸男氏が編成部部長からスカウト部長に、
米村明氏がアマスカウトチーフからシニアディレクターに役職が変わったものの、今年も経験豊富な2人を中心とした布陣となる。
音重鎮氏も北信越地区担当は従来のまま、チーフスカウトに昇格。完全担当制を継続しつつ、高い情報を共有しながら選手をチェックしていく予定だ。昨年はアマスカウトアドバイザーだった
中田宗男氏、東海地区を担当していた
近藤真市氏は布陣から外れることになった。
【2022補強ポイント】211人をリストアップ現時点では野手重視 今季最初のスカウト会議では211人の候補がリストアップされた。昨年はドラフトで獲得した6人のうち5人が野手だったこともあり、松永幸男スカウト部長の話によれば「今年は今のところは投手重視です」。211人のリストアップも半分以上は投手となったようだ。地元の東海地区を中心に全国の逸材たちに目を光らせる。
■編成&スカウト一覧 氏名[担当地区]=主な担当選手 ◎松永幸男
☆米村明=
根尾昂(大阪桐蔭高)
○音重鎮[北信越]
八木智哉[北海道・東北]=
石橋康太(関東一高・捕)
正津英志[関東]=
ブライト健太(上武大・外)
小山良男[関東]=
森博人(日体大・投)
清水昭信[東海]=
高橋宏斗(中京大中京高・投)
山本将道[関西]=
福元悠真(大商大・外)
野本圭[中四国]=
三好大倫(JFE西日本・外)
三瀬幸司[九州]=
石森大誠(九州/火の国サラマンダーズ・投)
◎=スカウト部長、☆=シニアディレクター、○=チーフスカウト DeNA・アナリスト経験者を登用
進藤達哉編成本部長、
河原隆一スカウティングディレクターを中心としたスカウト陣は、近年若返りを進めてきたこともあり、ほぼ変わらない顔触れで業務の精度向上に期待する。唯一の新加入は、地元横浜高出身で現役時代は主にリリーバーとして活躍した
横山道哉氏となった。引退後はアナリストのリーダー格としてチーム戦略の中枢を担ってきた。球団の先進的な取り組みや現場事情を誰よりも知る人材を大胆登用し、“横浜一心”でチーム強化を図る。
【2022補強ポイント】一軍戦力となる捕手内野手の補強が必要 昨秋ドラフトは即戦力候補の投手や外野手の補強に大きく振った。チーム構成のバランスを考慮すれば、一軍戦力として計算できる捕手の指名は欠かせない。また、次世代を担う遊撃手の育成がここ数年のチームの課題となっている。3年目の
森敬斗や
知野直人ら若手の成長次第では大学、社会人出から内野手の補強が必要となる。
■編成&スカウト一覧 氏名[担当地区]=主な担当選手 ★進藤達哉
☆河原隆一=
牧秀悟(中大・内)
○八馬幹典=
東克樹(立命大・投)
欠端光則[北海道・東北]=
濱口遥大(神奈川大・投)
篠原貴行[九州]=
浅田将汰(有明高・投)
(新)横山道哉[北陸]
稲嶺茂夫[関東]=森敬斗(桐蔭学園高・内)
吉見祐治[中国・四国]=
粟飯原龍之介(東京学館高・内)
安部建輝[近畿]=
小園健太(市和歌山高・投)
中川大志[東海]=
池谷蒼大(ヤマハ・投)
★=編成部部長、☆=編成部スカウティングディレクター○=アマスカウトグループGL