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【心揺さぶる名言】古葉竹識「時には殴ってもいいじゃないですか」

 


 1984年に自身4度目のリーグ優勝を成し遂げた広島・古葉竹識監督は、祝勝会で乾杯の音頭をとる際、右の拳で自分の頭をコツンと叩きながら「ま、今までこんなことをされた人も、水に流して、大いにやりましょう!」と叫んだ。それは、自ら鉄拳を振るいながら赤ヘル軍団を育て上げてきた長い時間を象徴するものだった。

 古葉が初めて監督に就任したのは75年。前任のルーツが電撃退任したのに伴いシーズン途中から指揮を執ると、チームは快進撃を続け、球団初のリーグ優勝を手にした。現役時代に盗塁王を2度獲得した39歳の青年監督が標榜したのは、積極的走塁で1点を取りにいく攻撃的かつち密な戦法。ルーツから引き継いだ機動力野球はその後、チームカラーとして定着。また、「赤ヘル軍団」の愛称もその年に生まれたものだ。

 以降、在任11年でリーグ優勝4度、日本一3度、Bクラス落ちは2度のみ。決して厚くはない選手層で黄金時代を築いた裏には、穏やかな外見からはうかがい知れない壮絶な覚悟があった。

 初優勝の翌年、古葉は選手の育成について次のように言及している。

「チームが上位へ行くためには、殴っても引っ張っても、なんとか育てなければいけない。本気になって向き合って、言い合いもやるし、時には殴ってもいいじゃないですか」

 達川光男長内孝山崎隆造長嶋清幸小早川毅彦……。厳しい指導で叩き上げられた主力選手は数知れず。若き日の名将が拳に込めた執念こそ、カープの伝統の源なのかもしれない。

写真=BBM

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