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【心揺さぶる名言】江本孟紀「ベンチがアホやから野球ができへん」

 


 1981年8月26日の阪神ヤクルト戦(甲子園)、8回に3点を失い降板した阪神先発の江本孟紀が、ロッカールームへ向かう途中、マスコミの前でつぶやいたとされるのが表題の言葉である。

 好投していながら早い回で交代させられたかと思えば、この日は序盤で球数を費やしていたのにベンチが動かない。起用法に対する不満を吐露した一言は波紋を呼んだ。翌日、球団から事情聴取を受けると自ら申し出て任意引退に。怒りに任せた暴言が招いた不測の事態とも取れるが、そこには江本自身が持ち続けてきた信念も反映されている。

 打者の胸元を突く強気の投球で頭角を現した若手時代、攻撃的なスタイルの由来について次のように語っている。

「今までにいろんなことがあり過ぎたんです。その経験が僕にとって相当プラスになっている。頼れるのは自分の力だけだということが分かった上でプロに入れましたから」

 高知商高時代にはセンバツへの出場を決めながら直前に部内の暴力事件で出場停止。そのような経験から築かれたのが、他に頼らない“自己本位”のスタイル。引退後には現代のプロ野球選手のあり方について「『俺が俺が』の“傲慢タイプ”が少なくなった。選手は監督のために野球をやるもの、といった風潮で、お世話になったり、我慢して使ってくれたことに感謝したり。両者の役割の解釈が間違っている。首脳陣は選手を手助けする立場であり、監督やコーチがいなくても試合はできるんやから」と述べている。

 ベンチ批判と、それによる引退は、最も江本らしい花道だったのかもしれない。

写真=BBM

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