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【MLB】時間短縮で効果を上げた公式戦 果たしてポストシーズンでの評価は?

 

ツインズがブルージェイズに2連勝しワイルドカード・シリーズを突破したが、この2試合目は2時間40分。第1試合も2時間41分だった


 MLBはエンターテインメントの世界で激しい競争にさらされている。いかに人々に野球のために時間とお金を費やしてもらうか? ライバルはNFLやNBAといったほかのプロスポーツリーグだけではなく、ネットフリックスやアップルTVなども競争相手だ。

 だから2023年の新ルール導入は待ったなしの状況だった。野球は時間ばかり長くて、アクションが少なく、退屈な娯楽と見なされていた。年々少しずつテレビ視聴率が下がり、観客動員数が減り、低落傾向にあった。そこに歯止めをかけ、再び右肩上がりになるようにしなければならない。

「われわれは市場調査をしてファンの声に耳を傾け、人々が見たいと思うゲームを提供できるようにした」とロブ・マンフレッドMLBコミッショナー。効果はてきめんだった。観客動員数は7075万人で22年の6456万人から600万人以上も増えた。7000万人を超えたのは17年以降では初めてである。

 1試合当たりの平均観客数は2万9295人で、前年の2万6843人から9.1%も増加、この30年間では最大の増加率だった。ポイントはピッチクロック導入で試合時間が短縮され、ゲームセットまで見やすくなったこと。9イニングの試合の平均時間は2時間39分49秒で、1984年の2時間35分以来のテンポの良さ。最も長かった21年の3時間10分7秒に比べると30分18秒も短縮された。

 3時間半以上の試合はわずか9試合、21年にはこれが390試合だった。ルール施行前は、ピッチクロックでプレーを急かされることで、ケガ人が増えると危惧されたが、それもなかった。投手も野手も負傷者リストに入った回数は昨季よりも減った。ちなみに、ピッチクロック違反が一番多かった球団はメッツで57度、少なかったのはマリナーズで15度。選手では一番多かったのはフィリーズのクレイグ・キンブレル投手で13度、打者で一番多かったのはナショナルズのイルデマロ・バルガスで5度だった。

 こうして試合のテンポが良くなるとともにアクションも増えた。1試合当たりの得点は22年の8.6点から23年は9.2点。打率は、昨季は.243で1968年以来一番低かったが、シフト制限のおかげで.248に上がった。左打者は11ポイント上がって.247に。右打者は2ポイント上がって.249だった。

 エンゼルスの大谷翔平選手は初めて打率3割をマークしたが、フィル・ネビン監督は「メジャー全体で多くの左打者に恩恵があった」と説明している。ちなみに、守備選手がシフト制限のルールを破って、ポジショニングを誤れば、違反でボールが宣告される。しかしそういった事態はシーズンを通して4度だけ。トラブルにはならなかった。盗塁成功数は前年の2486個から3503個に増え、1987年以降では最多だった。

 さて、ポストシーズンも同じルールで行われている。昨季の平均時間は3時間23分だったが、どこまで短縮されるのか? そしてその上で良かったとなるのか、せっかくの大事な試合なのに短過ぎると文句が出るのか? ワールド・シリーズが終わった時点での評価がとても興味深い。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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