先週号でプロ野球の契約更改とプロ野球ビジネスについて語ってくださった元ソフトバンク役員・小林至氏(江戸川大教授)が再び登場。今回はキャンプマネーについて、広範囲にわたって解説してもらう。 取材・構成=富田庸、写真=BBM ソフトバンクがキャンプを行う宮崎市の生目の杜運動公園には、連日多くのファンが訪れる。やはり九州という“地の利”は大きい
2月に球団がやって来る意味
キャンプでかかる経費で、一番大きいのが宿泊に伴う費用です。キャンプ総費用の6割〜8割といったところですかね。宿泊、3食、ランドリーを含めた1泊の値段が、安い球団で2万円弱、高いと3万円前後くらい。この1泊あたりの単価に、人数と宿泊数を掛けると数字が出てきますね。人数は、選手、スタッフ合わせて、少ない球団で120人前後、多いところは170人くらいでしょう。仮に単価2万円、計150人、20泊とすれば、6000万円、30泊ならば9000万円。単価が3万円ならば、その1.5倍。おおまかにはこんな数字になります。これに、旅費、交通費、球場使用料、アルバイト料が加わります。
大体、フロア全体を借り切ってしまう形で、一軍は一流ホテルの個室です。監督、コーチ、ベテラン選手の順に、良い部屋を割り当てるのが通常ですね。
王貞治会長からは「昔は旅館の大部屋に寝泊まりしていた」という思い出話をよく聞きました。先人の努力のおかげで、今の選手は恵まれていますよ。
春季キャンプは選手と触れ合える貴重な機会。球団側もファンサービスに努める[写真はDeNAの倉本寿彦]
キャンプのスケジュールは前年の早い段階、少なくともペナントレース中には決まります。ホテル側としては予約が早ければ早いほどありがたい。ただ、球団サイドとしては質を落とすことなく、単価を下げたい。結果、複数年契約に落ち着くこともあります。これは一般のビジネス交渉と同じです。
球団の宿泊先となることで、ホテル側には大きな付加価値が生まれます。ソフトバンクの場合で言いますと、選手が泊まる宮崎の高級ホテルが、2月は満室になります。球団が2〜3フロアを押さえますが、そのほかの部屋が一般用となりまして、これが毎年、争奪戦。選手と同じホテルに泊まることで、より日常に近い姿に間近に接することができる。魅力は大きいのでしょう。
繁忙期ではない2月に、球団がファンや報道陣を多数連れて来る。春季キャンプは、チームが宿泊するホテルだけでなく、その街全体の経済を活性化させます。ホークスを例に挙げると・・・
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