週刊ベースボールONLINE

2015変化球特集

160キロのカットボール!? 世にも不思議な変化球の話

 

投球されたボールは、物理的に言えばすべて落下運動。ということは、打者が待ち受けるボールは、全て変化球なのである。この落下運動に、いかに“驚き”を与えるか(物理的にも、心理的にも)で、その有効性も決まる。剛速球は「もう速度が落ちるだろう」と打者が判断するところでグーンと伸びるように見えるから、打者は「エッ!?」と驚いて打てない。今回は、この伸びの驚き以外の、曲がったり、落ちたり、揺れたりの世にも不思議な変化球のお話を少々。
文=大内隆雄

山口高志の160キロのカットボール


「世にも不思議な」と言っても、これらの変化球は、物理法則に反するワケではない。ただ、打者の「驚き」が尋常ではなかった例を4つ紹介してみよう。

 山口高志(阪急)と言えば、ストレートは常時160キロは出ていたと言われる伝説の剛速球投手。実は、この山口が、恐るべき変化球の持ち主だったことをご存じだろうか?

 生の山口を見たことのある読者は、「山口は、タテにちょっと落ちるカーブしかなかっただろう」と首をかしげるかもしれないが、左様、そのカーブしかありませんでした。恐るべき変化球というのは、実はストレートのことなのです。ン?山口は、ガムシャラにストレートを投げるだけの投手だったが、指のかかり具合で、ボールがスライドすることがあった(その反対のシュート気味のボールはほとんどなかったと思う)。これは、言ってみれば160キロのカットボール!左打者の内懐ろに来たら、これはまず打てなかったハズである。

無意識のうちに160キロの高速カッターを投げた山口高志


 筆者は、山口は関大2年時が一番速かったと思っているのだが、大学選手権の準決勝で対戦した法大の長崎慶一(のち、大洋で首位打者となった左の好打者)は「あんまり速いので、もうヤケクソで目をつぶって振ってやれとスイングしたら、これがジャストのタイミング。普通ならホームランですよ。それが、バットは真っ二つ。打球はフラフラとレフトへ。いやぁ驚きました」と言ったことがある。これって、今思うと160キロのカットボールだったのではないか・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング