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永遠のPL学園

PL学園 甲子園ベストゲーム5選

 



“逆転のPL”の異名を取り、初優勝を遂げた1978年。KKコンビが世間の話題をさらった83〜85年。横浜と延長17回の死闘を繰り広げた98年――。PL学園は、これまで幾多の激を繰り広げてきた。その中から、甲子園で取材をしてきた筆者が、ベストゲーム5試合を選定し、当時を振り返る。
文=楊順行、写真=BBM

78夏 準決勝 対中京(〇5対4)
“逆転のPL”の始まり


延長12回、二死満塁から押し出し四球でサヨナラ勝ち。“逆転のPL”はここから始まった



 小刻みな4点は重い。しかも、9回表の1点はこたえる。だからPL・鶴岡(現姓・山本)泰監督は9回裏、「せめて1点は取ろうや」と声をかけた。そこまで、中京の右腕・武藤哲裕に無得点。だが、打てない投手ではない。現に、自チームの控え投手「金石(昭人・元巨人など)とどっちのボールがいい?」と聞くと、選手は「金石です」と声をそろえた。

 だったら打てるやろ、という呪文が効いた。先頭・西田真二(元広島)の三塁打から始まり、柳川明弘の二塁打でまず1点を返すと、一死後も連打でたたみかける。2点差の二死満塁から、渡辺勝男は二塁ベース寄りのゴロ。捕ったセカンドは、ベースカバーのショートにトスするも間に合わず、さらにボールは一塁に転送されるが、渡辺の足が一瞬早く内野安打に。この間に2人がホームにかえり、同点とした。そして12回裏には、二死満塁から荒木晴信が押し出しの四球を選び、PLが奇跡的なサヨナラ勝ちを遂げる。

 のちに母校の監督として09年夏の甲子園を制覇する大藤敏行は、このとき中京の1年生。アルプスで声援を送っていたが、4点リードの9回裏を迎えたところで、一足先に宿舎に引き揚げている。翌日の決勝に備えて、洗濯をすませておけという指示だったからだ。それが、大量の洗濯物と格闘しているうちに、宿の人が「追いつかれた」「延長に入った」と報告してくれた。だから、サヨナラ負けの結末は見てはいない。

 それほどのどんでん返し。試合後のインタビューで鶴岡監督は、「こんなことは二度とありません」と語ったほどだ。だが翌日の決勝でも、二度目の奇跡が起きる。この日もPL打線は、高知商の2年生左腕・森浩二(元ヤクルトなど)に8回まで0に封じられていた。0対2、それもわずか3安打だ。だが9回裏、先頭の中村博光が初球を中前にはじき返すと、にわかにベンチが盛り上がる。「また、やれるんやない?」。なにしろ、昨日の今日だ。そして四球、バントで一死二、三塁とすると、木戸克彦(元阪神)の犠牲フライでまず1点。さらに西田の二塁打で同点とし、最後は柳川が深々と左中間を破る。絵に描いたような、というよりだれにも書けないような筋書きで、PLが初優勝を飾ることになる。西田がサヨナラのホームを踏んだとき、鶴岡監督は、「3点目が入ったんだな。ということは、これで勝ったんか?」と、横にいる部長に確認したという。それほど、出来過ぎの幕切れだった。

 これ以後もPLは、甲子園で神かがり的な試合をいくつも演じ、“逆転のPL”と呼ばれることになる。



84夏 準決勝 対金足農(〇3対2)
カーブ狙いの逆転弾


「カーブだけを狙っていました」と言う桑田。そのカーブを逃さずレフトスタンドへ逆転の2ランを放った



 PLは、主役だった。前年、1年生のKKを中心に池田の夏春夏3連覇の野望を粉砕し、全国制覇。84年の春は決勝で不覚を取ったが、この夏は享栄との初戦、清原が1試合3ホーマーの猛打を発揮するなど、盤石の試合ぶりで4強に進出している。連覇まで、あと2つ――。だが、思わぬ難敵がいた。初出場の金足農だ。

 水沢博文と長谷川寿のバッテリーには、策があった。清原とは、勝負を避ける。事実、初回二死一塁から清原を敬遠し、続く桑田を打ち取った。清原を歩かせるには、前を打つ打者の出塁を避けることが必須だが、PLはスタメンの一から三番が結果的に無安打。水沢は得意のシュートを駆使し、それを意識させて外のカーブやスライダーで泳がせた。かくして5回まで、1安打無失点。初回、長谷川の内野安打で奪った1点を守っている。

 6回、代打・清水哲のヒット、北口正光の適時二塁打で同点に追いつかれたが、7回には1点勝ち越し。8回一死、大金星まであとアウト5つとした。追い込まれつつあるPLの打席には清原。勝負にいったバッテリーは結果的に四球を与えたが、まずまず、予定どおりだ。しかし・・・

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