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寺原隼人投手・先発ローテ争いに立ちはだかる“超あこがれの人”

 



 運命とはいたずらで、数奇なものだ。宮崎・日南学園高時代に怪物の称号を与えられた寺原隼人が“平成の怪物”松坂と、同じ釜の飯を食うことになった。「超あこがれの人。中学とか高校のときに(投球フォームを)マネをしていた人が入ってくる」。同じユニフォームに袖を通すことを思うと、少年時代のワクワク感がよみがえる。ただ、プロはそれで飯は食えない。

「同じチームになってしまえばライバル。そっちの思いの方が大きいですよね。昨年でも先発ローテ争いが激しかったのに、さらに激しくなる」

 FA移籍2年目の昨季は厳しい生存競争をくぐり抜け、開幕ローテ入りした。だが5月に古傷でもある右ヒザの手術を受け、わずか5試合登板。不本意極まる1勝4敗の成績に甘んじた。昨年内にブルペン投球も再開したが、復活への道のりは平坦ではない。

 戦列を離れている間、昨季開幕時には一軍にいなかった大隣や武田が好投を続け、東浜、飯田らの若手も台頭。そこへ来ての松坂加入――。今季の先発ローテ争いは空前の激戦。置かれた立場を十分に理解しているからこそ、牧歌的な胸の内ではいられない。

 3学年上の松坂は3年時に甲子園春夏連覇。夏の決勝ではノーヒットノーランで優勝を飾った。「僕は中3だったけど、みんな松坂さんのマネをしていた」。日南学園高では3年夏の甲子園に出場し、当時最速となる154キロをたたき出した。「スピードだけ抜くことはできましたけど、あとは足元にも及ばなかった」。あの夏の経験、誇り。プロになった糧としてむげには扱わない。ただ、そのことは胸の奥にそっとしまって、今は戦わねばならない現実と向き合う。
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