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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「オールスター」

 

オール・パのセに対するライバル心は相当だった


 現役時代、私はオールスターゲームに21回出場させてもらった。私にとってのオールスターは、日本シリーズの前哨戦のようなものだった。日本シリーズを想定し、なんとか少しでもセ・リーグの情報収集をしようと、試合に臨んだ。パの選手たちのセへの対抗心は相当なもので、「セには負けるな」が合言葉。当時はよく張本(張本勲=東映)が音頭を取っており、「ノムさん、絶対ONには打たれるなよ!」と私も檄を飛ばされた。

 私とて、1963年に小鶴誠(松竹)さんのシーズン51号記録を13年ぶりに更新した翌年、わずか1年で王(王貞治=巨人)にその記録を破られた“恨み”がある。そこで“王対策”を講じ、王を38打席ノーヒットに打ち取った話は、すでにこの連載で紹介済みだ。

 ONのN、長嶋茂雄(巨人)については、あれはオールスターのときだったか、村山(村山実=阪神)に「長嶋攻略法を教えてくれ」と頼んだことがある。村山といえば、8割型フォークボールのピッチャーだ。

「簡単ですよ」

「ええっ、本当かい?」

 聞くと、「長嶋さんは常に打ち気だから、その打ち気を利用する。コースは甘くてもいいから外寄りにポトンと落とせば、勝手にゴロを打ってくれるんですよ」という。真ん中からちょっと外寄りのコースに、落ちる変化球を投げる。長嶋なら、真ん中から外角いっぱいのちょうど中間あたりのところへシンカー、カットボール(われわれのころは、「小さいスライダー」と呼んでいた)を投げて、ショートゴロ、セカンドゴロに打ち取るわけだ。だから、彼は併殺打が多かった。

 内角を詰まらせる、または外の甘いところを引っかけさせる。以前も書いたが、私はこれを『ゴロゾーン』と呼んでいた。ゴロを打たせたいときは、この2つのパターンを柔軟に使い分ける。外寄りの球を低めに変化させると、ゴロになる確率が高いのだ。これには根拠もある・・・

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野村克也の本格野球論

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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