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Vol.11 平沢大河(仙台育英高・内野手) 3拍子そろった攻撃型ショート

 

平沢大河、攻守走そろった好プレーヤーだ。昨秋の神宮会でその実力を証明しており、この春のセンバツ大会でも期待が持てる打者である。特に調子が良いときは手がつけらない。春の甲子園ではぜひ、注目してほしい一人である。

 昨秋の明治神宮大会で優勝を果たしたチーム不動の三番打者。強豪が集う大舞台で10打数5安打、打率.500、5打点、1本塁打と大爆発。印象的な活躍を残した。高校生の中ではトップクラスの能力の持ち主で、3月21日に開幕する春の選抜高校野球大会でも大きな飛躍が期待される好プレーヤーである。


 打撃フォーム(8.5)は良いときと悪いときのムラがある。良いときのバッティングフォームは満点に近い。バットスイングが早く、インパクトで強く叩くことができる。積極性もあり、1試合でヒットを量産できるのが特徴だ。しかし、悪いときはボール球に手を出してしまい、凡打に倒れてしまうときが多い。原因は下半身の使い方。高校生だから致し方ない部分もあるが、始動してから軸足に体重を乗せ、バックスイングを取り、トップを作って、スイングをする。この基本的なフォームがまだ固まっていないため、タイミングが狂ってしまっているのだろう。これは経験を積むことも大事だが、ベンチやネクストバッターズサークルで相手投手を観察すること、そして心の中で「1、2の3」を意識することが大事になってくる。タイミングの取り方が一定し、右中間や左中間、さらにはライトオーバーに強い打球が打てるようになってくると、“打てるショート”としての評価が間違いなく高まる。

 打撃フォームが不安定なため、選球眼(7.5)は悪い。特にタイミングの取り方が狂っているときは、悪球に手を出してしまうことがある。軸足への体重の乗せが甘く、上体が突っ込んでしまうからだ。これも打撃フォームが安定すれば、改善される。選球眼の向上は見込めるだろう。

 フットワークが軽い遊撃守備(8.5)は素晴らしい。速い打球への対応、緩いゴロへの一歩目の出方、併殺プレーの動きも高校生としては群を抜いており、欠点が少ない守備力を持っている。強いて言うならば、三遊間深いゴロの捕球から送球の動作がまだ鈍い。意識を高めることが必要だ。走塁(8.5)のレベルも高い。常に次の塁を奪う意欲があり、一歩目のスタートも良い。スピード感あふれるランニングは目を見張るものがある。このように守備、走塁ともに判断力(8.0)は高い。あとは打席内での選球眼や試合状況のバッティングを磨くことができれば、まだまだ成長する。3拍子のバランス(8.0)は整っていると言える。

 一見強そうに見えるメンタル(7.5)だが、どこかまだ自信がなさそうにプレーしているように見える。まだキモが座っていない。これも実績を積めば成長するだろう。体力(8.0)はある。だが、上背がある方ではないので、もう一段階パワーアップする必要がある。恐らく本人も気づいているはず。この冬で体を一回り大きくしようとトレーニングに励んでいるに違いない。

 総合力(8.0)は平均点以上。将来性(8.5)も高い。ただ、スケールがまだ小さい。3拍子そろっているが、この中から秀でた特徴が出てくれば、さらに注目を浴びるだろう。私はバッティングに期待したい。まだまだ発展途上。春のセンバツで一つの答えが出る。

■採点表
打撃フォーム 8.5
選球眼 7.5
守備力 8.5
走塁 8.5
3拍子のバランス 8.0
判断力 8.0
メンタル 7.5
体力 8.0
将来性 8.5
総合力 8.0
合計 81.5
※採点の基準は2015年のドラフト対象選手

PROFILE
ひらさわ・たいが●1997年12月24日生まれ。宮城県出身。176cm 71kg。右投左打。小学1年時に塩竈ドラゴンズで野球を始め遊撃手兼投手。高崎中時代は七ケ浜シニアに在籍して、2年夏に全国大会出場。仙台育英では1年秋からベンチ入りし、遊撃手のレギュラー。2年夏は県大会4回戦敗退。2年秋は県大会、東北大会を制し、神宮大会決勝(対浦和学院)では高校通算14号本塁打を右中間スタンドに運び、2年ぶり2度目の優勝に貢献。
プロフェッショナルレポート

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元巨人チーフスカウトで現在はベースボールアナリストとして活動する中村和久によるドラフト候補生の能力診断。

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