週刊ベースボールONLINE


ヤクルト・山田哲人&雄平
3割30本100打点への期待

 

打率、本塁打、打点の3部門でトップを独占する3冠王は、04年の松中信彦(ダイエー)を最後に、もう10年間も誕生していない。「3割30本100打点」もこの4年間で2人だけ。2人とも外国人選手である。しかし、昨年はヤクルトの2人の日本人がかなり接近していた。2人とも打者としては経験が浅いだけに、1年経った今シーズンへの期待が高まっている。

まだまだ伸びしろがある2人の可能性


 ヤクルトのその2人とは山田哲人雄平だ。山田は打率.324で29本塁打、89打点であり、雄平は.318で23本塁打、90打点。昨年の開幕前には2人ともまったく想像も及ばなかった2人の成績だ。



 山田は10年秋のドラフトで履正社高から1位指名で入団。打力、強肩、俊足と三拍子そろった遊撃手として入団。1年目の11年は一軍出場はなかったが、イースタンでは114試合すべてに出場し、打率.259で5本塁打、39打点で素質の一端を覗かせていた。2年目の12年はイースタンで40試合に打率.293、8打点で一軍昇格。26試合で.250で1本塁打であったが、3年目13年は94試合で.283、3本塁打、26打点でいつの間にか二塁の正位置を確保。4年目の14年は7月12日のDeNA戦に発熱で欠場した以外は全試合に出場。その結果が打率.324、29本塁打、89打点。15盗塁し失敗5で75%の高い成功率。ベストナインにも選出された。

昨年は右打者のシーズン最多安打記録を塗り替えて大ブレークした山田哲人。2015年はトリプルスリーも視野に入れる



 いまでこそ強打者として鳴らす雄平だが、02年秋のドラフトでヤクルトから1位指名で東北高から入団したときは投手であり、登録名も高井雄平であった。最速151キロの直球に加え、スライダーなど変化球のキレも十分で、即戦力として期待される高校球界屈指の左腕であった。1年目の03年は27試合に登板し5勝6敗。07年まで毎年、勝利投手になっていたが、5年間で18勝19敗。08、09年は1試合ずつしか登板できなかった。本人はいま「練習すればするほど深みにはまる感じであった」と当時の苦しみを語っている。

 09年途中から外野手になったが、転向1年目にイースタンとはいえ98試合に.283で、4本塁打、35打点だから、非凡な打撃の才能を見せつけてくれた。

 10、11年は一軍に昇格できず、ファームで研鑽を積む。12年になって一軍でも打者として再スタートを切るが、転向5年目の14年になって大化けした。4月末では82打数20安打で.244であったが、5月に月間.361で8本塁打を打って調子に乗った。6月から閉幕の10月まで毎月3割台とあって、外野の一角は間違いなく確保した。この2人に加え、畠山が.310、川端が.306、バレンティンが.301で3割打者が5人。それでいてチームは最下位であった。

今シーズンは四番での起用になりそうな雄平。遅咲きの苦労人がさらなる高みを目指す



トリプルスリー最多達成者は王貞治


 1チームに3割打者、本塁打王、100打点以上がそろうのは偉業で、2人以上はこれまで13球団しかない。



3人以上となると85年の阪神1球団だけである。

▼バース .350、54本、134打点
岡田彰布 .342、35本、101打点
掛布雅之 .300、40本、108打点

 この年の阪神は2位の広島に7ゲーム差をつけて優勝。チーム打率.285、本塁打219、ともにセ・リーグ第1位。同年4月17日の巨人戦(甲子園)では7回二死一、二塁から、バース、掛布、岡田の3人が立て続けにセンター越えの本塁打を放ち、一気に5点を奪って1対3の劣勢を逆転した。投げた巨人の槇原寛己は3本塁打を打たれるのに6球しか投げなかった。この阪神に続くのは63、68、69年の巨人で、いずれもONによって記録された。この巨人も次に3割、30本塁打、100打点が2人出たのは40年後の09年であった。「3割30本100打点」を達成したのは全部で67人だが、1人で最多達成はもちろん王である。3度以上の達成者は次のとおりだ。

▽12度:王貞治(巨)63、64、65、66、67、68、69、73、74、76、77、78年
▽5度:山本浩二(広)77、78、80、81、83年
▽5度:ブーマー(急)84、85、86、87、89年
▽5度:松中信彦(ダ)00、01、03、04年、(ソ)05年
▽4度:小笠原道大(日)00、03、06、(巨)09年
▽4度:カブレラ(西)02、03、06、08年
▽3度:野村克也(南)62、65、67年
▽3度:長嶋茂雄(巨)63、68、69年
▽3度:長池徳二(急)69、71、73年
▽3度:大杉勝男(東映)70、71、(ヤ)77年
▽3度:門田博光(南)71、81、88年
▽3度:落合博満(ロ)85、86、(中)89年
▽3度:松井秀喜(巨)00、01、02年

 「3割30本100打点」の達成者は王の12度をトップに、全部で67人である。

それぞれの弱点克服で大記録達成なるか


 急成長を遂げたヤクルトの山田と雄平は、今年はさらに一段と腕を上げ、68、69人目の3割、30本、100打点を達成できるか。

 本塁打が多くなれば、打点も付随して多くなる。問題は打率であろう。そこで両選手の主要投手別の成績を検討することが必要になる。



 山田の場合は左腕攻略が問題である。右打者でありながら、左投手に苦戦している。右投手には420打数144安打の.343で本塁打も23本打っているが、左投手には176打数49安打で.278だ。本塁打も右投手から18.3打数に1本の割合だが、左には29.3打数に1本と少ない。

 13年は初めベンチスタートであった山田は、内海と初対決したのは7月30日だった。この日の内海は6回で退いたが、山田も遊ゴロの後、右飛2本で終わっていた。しかし、8月20日には3打数で1安打、9月3日には4打数2安打であり、9月24日には右翼へプロ入り第1号を見舞っていた。

 結局、13年の対決は16打数4安打で本塁打1を含む.267だ。その自信からか、14年も初対決の7月14日の3回に左越えの同点ソロとなって表れ、内海に8打数6安打で.750という常識とは逆の結果を残している。

 山田も雄平も14年の成績は素晴らしいが過去の対決が少ないだけに、カモとか苦手といった傾向を残すまでに至っていないのではないか。

 昨年の力を信じ、考えすぎに無心で新しいシーズンに臨み、3割、30本、100打点を目標に突き進むべきではないか。

 山田と雄平の2人が2015年シーズンに「3割30本100打点」を達成すれば、ヤクルトは優勝にグッと近づく。

 同一球団で2人以上がこの記録を実現したとき、過去のプロ野球において、13球団のうち8球団が優勝しているのは、なによりの大きな目標になるはずだ。
記録の手帳

記録の手帳

プロ野球アナリスト千葉功によるコラム。様々な数値から野球の面白さを解説。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング