稲葉GMも高評価

東洋大の155キロ左腕・細野は侍ジャパン大学代表選考合宿で猛アピールを見せた
これ以上ない緊迫感あるマウンドで、準備万端である。
二部優勝・東洋大は6月23日からの東都一部二部入れ替え戦(一部6位・駒大)が控えている。春のシーズンはまだ、終わっていない。東洋大の155キロ左腕・
細野晴希(4年・東亜学園高)はこの1年「一部昇格」だけを考えてきた。
細野は侍ジャパン大学代表選考合宿(6月17~19日、バッティングパレス相石スタジアムひらつか)に参加。紅白戦は投手1人につき、2イニングが与えられる。細野は20投手のトップで登板し、2回1安打無失点(4奪三振)に抑えた。
初回の二死一、二塁のピンチでは慶大・
廣瀬隆太(4年・慶應義塾高)に対して、この日最速の153キロで、見逃し三振を奪った。廣瀬は東京六大学歴代7位タイの18本塁打を記録している右のスラッガー。外角いっぱいのストレートに、手も足も出なかった。2イニング目は貫録の投球で、三者凡退で斬った。
ネット裏で視察した
日本ハム・
稲葉篤紀GMは「見るのは去年の12月以来(侍ジャパン大学代表候補強化合宿)ですが、また一段と球も良くなった。左投手は貴重なので楽しみです」と評価した。細野は大一番を前にして、確信を持った。
「緊張しましたが、ゼロに抑えられて良かった。オープン戦では感じられない、試合形式。スイッチが入りました。(入れ替え戦に)つながると思います」
東洋大は5月11日に二部優勝を決めた。一部二部入れ替え戦まで1カ月以上の調整期間となったが「体も休めました。前回も経験しているので心配ない」と貫録たっぷり。東洋大は昨春も二部優勝で、中大との入れ替え戦に臨んだ。細野は1勝1敗の3回戦で先発。7回無失点で降板後、東洋大は1点リードした9回裏に逆転サヨナラ負け(1対2)を喫した。昨秋は二部2位で、入れ替え戦へ進出できず。細野は「勝てる投手」になるため、厳しい冬場を乗り越えてきた。
細野は1年前も同合宿に選出されていたが、入れ替え戦と日程が重複した諸事情もあり、参加を辞退。今年は日程面の問題がないため参加。充実の2イニングとなった。
6月19日に、日米大学選手権に出場する代表26人が発表される。
「WBCを見て刺激を受け、(侍ジャパンで)プレーしたいと思いました」
エンゼルス・
大谷翔平が同僚のトラウトを空振り三振に斬って世界一を決めたシーンを見て、思わず「おっ!!」と興奮したという。侍ジャパン大学代表を指揮する大久保哲也監督(九産大監督)は「アメリカの打者に対して、歴代チームを見ても、タテの変化が有効」と、投手の選考基準の一つとして語った。19日には初代表入りが決定。細野には指揮官が求めるツーシーム、チェンジアップ、スプリットが持ち球としてあり、日米大学選手権でも活躍が期待される。
だが、まずは、東洋大のエースとして一部復帰を導くことだけに専念する。
文=岡本朋祐 写真=矢野寿明