春のセンバツより一足早く社会人も公式戦が開幕。3月8日から4日間、東京スポニチ大会が行われた。ドラフト解禁年を迎えた若き逸材が早速アピール。名門・ENEOSで大卒入社2年目を迎える、期待の野手も実力をスカウトに好印象を残した。 文=大平明 写真=矢野寿明 場数を踏む司令塔
今季から名門・ENEOSの指揮を執る宮澤健太郎監督は「(大卒)2年目の3人衆には、チームを引っ張っていってもらいたい」と大きな期待をかける。3選手とも、プロ入りへアピールできる優れた特長を持っている。
捕手の有馬諒は近江高時代、
林優樹(現
楽天)とバッテリーを組んで甲子園に3度出場。2年夏は準々決勝で金足農高と対戦し、2ランスクイズを喫して無念の逆転サヨナラ負け。グラウンドに倒れ伏したまま涙を流す姿を覚えているファンもいることだろう。関大では関西学生リーグでベストナインを4度受賞し、侍ジャパン大学代表にも選出。しかし、プロ志望届を提出するもドラフト指名はなく、ENEOSへ進んだ。
昨年はU-23W杯にも出場。9試合中5試合で先発マスクをかぶり2大会連続3度目の優勝に貢献した。アジア・ウインター・リーグにもJABA選抜として出場し、多くの場数を踏んできた。
「レベルが高い選手と同じチームでプレーできて、刺激を受けました。捕手としては、初めて対戦するバッターばかりだったので、打席の立ち位置を確認したり、タイミングの取り方やスイングの仕方を見たりしてリードをしていました」
考えながらリードして、ゲームを作っていけるのがセールスポイント。インサイドワークには定評があり、宮澤監督も「冷静にプレーできるクレバーな選手」と評価している。今季は正捕手の座を奪取。JABA東京スポニチ大会では全3試合でスタメン出場し盗塁を2つ刺した。
攻撃面では状況に応じた打撃ができ、この冬は「まだ体ができていないので、筋肉量や除脂肪体重などの数値を気にしながらウエート・トレーニングをしてきました。そのおかげでパワーが付き、打球が飛ぶようになっています」と、予選リーグの鷺宮製作所戦では左中間へ二塁打を放ち、成果を上げている。「目標はプロ。もちろん最高峰の舞台でやりたいと思っていますが、まずは都市対抗で日本一に貢献してからプロへ行きたいです」。

有馬諒[捕手]/ありま・りょう●2001年4月3日生まれ。奈良県出身。182cm87kg。右投右打。[甲]近江高-関大-ENEOS[2年目]
攻守で生きるスピード
昨年までENEOSの監督を務め、都市対抗で最多の優勝4回を誇る
大久保秀昭チームディレクターが「預かった選手の中で1番目か2番目に脚力がある選手」と評しているのが松浦佑星だ。日体大では3年秋にリーグ戦12試合で14盗塁を記録。同冬の侍ジャパン大学代表強化合宿では50メートル走で5秒95を計測し、参加者のなかで2番目のタイムを出した。しかし、4年時は2度の肉離れに見舞われ「満足なアピールをすることができませんでした」と、ドラフトでは指名漏れとなった。
ENEOSでは1年目の開幕当初から先発出場し、都市対抗では2戦4安打で打率.571を記録している。オフシーズンはトレーニングで基礎体力を上げる一方、ランメニューを多く取り入れてきた。「出力を上げて、さらにスピードが出せるように距離をいろいろと変えながら、かなり走ってきました。実際に足は速くなっていると感じています」。
打撃は「下半身をしっかりと使って打つことをテーマにしているのですが、強い打球が増えてきました。また、リラックスして打席に立つように心掛けていて、うまくいっていないときこそ力を抜くことができるようになりました」と話す。
予選リーグ初戦のJR西日本戦で5打席目に初安打。「ボールの見え方は悪くなかったので余裕がありました。昨年まではヒットが出ないと焦ってしまうところがあったのですが、最後に打てたのが成長したところだと思います」。
続く鷺宮製作所戦では3回に中前打で出塁すると、すかさず二盗。Honda鈴鹿戦でも2安打1打点1盗塁と持ち味を発揮している。遊撃の守備でもスピードを生かした広い守備範囲を披露。JR西日本戦では三遊間寄りの緩い打球を捕球すると、俊敏なジャンピングスロー。鷺宮製作所戦では無死一塁から意表を突いたバスターでの三遊間への打球をキャッチすると、素早く二塁へ送球して封殺。攻守走三拍子がそろっているところを見せた。「プロに入ることは小さいころからずっと変わらない夢。これまでやってきたことを信じて、やるべきことをやって叶えたいです」。

松浦佑星[内野手]/まつうら・ゆうせい●2001年10月6日生まれ。宮崎県出身。175cm77kg。右投左打。[甲]富島高-日体大-ENEOS[2年目]
2年連続を目指し
村上裕一郎は昨年の都市対抗1回戦(対東海理化)で2ラン。昨年8月のJABA長野大会では、4試合で4本塁打を放った。年間5ホーマーで、新人年で社会人野球表彰の最多本塁打賞に輝いた。勝負の2年目は、東京スポニチ大会の初戦(対JR西日本)で6回無死一塁から左翼越えの勝ち越し弾。この一発がチームを勝利へ導いた。「毎試合、大切にしている1打席目はセンターフライだったのですが、大きな飛球だったので『今日は行けるぞ』と感じていました」と振り返る。
遠くへ飛ばす秘訣はスイングスピードの速さで、この冬はトレーニングに励んでさらなるパワーアップを図っている。打撃フォームは後ろを大きくすることを意識する。
「バットを最短距離で出すというよりは、遠心力を利用するために少し弧を描くようなスイングをしています。そして、できるだけ腕は後ろに残して、捻転差を使えるようにし、それからボールのラインにバットを入れています。参考にしているのは
大谷翔平さん(ドジャース)で映像もよく見ています」
目標は2年連続タイトル獲得だ。「ホームランを7本打って、もう一度、本塁打王になり、打点王も獲りたいです」。宮澤監督も「長打があるので、一振りで流れを変えられる選手。昨年は下位の七番あたりを打っていましたが、今季は主軸としてマークされるなかでも結果を残し、存在感を示して次のステップへ向かって行ってほしい」と昨季以上の成績を望んでいる。「プロは幼いころから行きたいと思っているところ。外野手として肩には自信がありますが、守備も走塁もまだまだ。打撃も確実性を高めていきたい」。

村上裕一郎[外野手]/むらかみ・ゆういちろう●2001年6月14日生まれ。愛媛県出身。184cm94kg。右投右打。[甲]宇和島東高-九州共立大-ENEOS[2年目]
頭脳派の捕手、俊足巧打の内野手、長距離砲の外野手とポジションもプレースタイルもまったく異なる3選手だが、それぞれの個性を生かし、プロへの道を切り開いていく。