公式記録員とは、観客からは見えない場所で、1球1球のプレーに目を離さず、試合展開をスコアシートに記す仕事だ。選手の数字はすべて、ここからはじき出される。いつも、淡々と実直に――。「3.28」とは、どのような位置づけなのだろうか。 取材・文=落合修一 
山川記録部長が印象に残る開幕戦だと言う1994年4月9日の西武対近鉄[西武]で近鉄・野茂英雄投手が鈴木啓示監督に交代を告げられた場面
自然体の気持ち
「開幕戦は野球ファンからいつも以上に注目されるので、独特の緊張感があります。しかし、われわれは目の前で進行中のプレーを正確に記録することが目的なので、緊張感を保ちながらも前のめりにならず、普段どおりの気持ちで臨むようにしています。一歩引いて、自然体の気持ちで試合全体を見ます」
公式記録員の役割。最大6カード開催されるプロ野球の公式戦では、日本野球機構に所属する記録部員が、メインの記録員とサブの2人1組で担当する。山川氏は記録部長の任にある。公式記録員は審判員と違い、野球中継や、スタンドで観戦していても、観客がその存在を意識することは難しい。しかし、プロ野球の公式戦の記録が永久に残り、選手の個人記録も生涯成績として残る以上、絶対に欠かせない重要な役割だ。
公認野球規則にある「9.00 記録に関する規則」の「9.01 公式記録員」の一部を抜粋する。
「記録員は、新聞記者席内の所定の位置で記録をとり、記録に関する規則の適用に関して、たとえば打者が一塁に生きた場合、それが安打によるものか、失策によるものかなどを、独自の判断で決定する権限を持つ。クラブ職員およびプレーヤーは、その決定について記録員に異議を唱えることはできない」
グラウンド全体を冷静に見渡し・・・
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