
巨人・戸郷から本塁打を放った大谷に球場が興奮のるつぼと化した[写真=高原由佳]
打った瞬間に東京ドームが異様な雰囲気と歓声に変わった。打ってほしいときに打つ。まさにスーパーヒーローと言える一打だった。「ホームランは最高の結果なので、打てたらいいですけど」と前日の会見で語った
大谷翔平(ドジャース)。誰もが期待した帰国最初の試合での本塁打を見事に右翼席へと運んだ。
3月15日、巨人とのプレシーズン・ゲームが凱旋試合となった。一番・DHで出場。試合前練習では東京ドームのファンが今かと見守り、セレモニーで名前が
コールされると、歓声とともに異様な雰囲気に包まれた。メジャー開幕前の練習試合にもかかわらず、大フィーバーとなった。
試合開始とともに、打席に入った大谷は、四球を選ぶと球場は大きなため息に包まれる。この日のハイライトは3回表だった。マイケル・コンフォートの先制本塁打などもあり迎えた無死二塁の場面。巨人先発の
戸郷翔征の初球、甘く入った緩いカーブが真ん中低めへ。やや泳ぎながらも強いスイングでとらえ、あっという間に右翼スタンド中段へ吸い込まれた。打球速度169キロ、約120メートルの特大弾。打った瞬間の確信歩き。ドジャー・スタジアムで昨季見た光景が東京ドームでも起こった。大谷は4万2064人の歓声すべてを体に浴びながら、ゆっくりと一周。誰しもがこの場面を願っていた状況で、思い描いた一発を放ったのだ。この2ランで試合をほぼ決め、巨人を5対1で退けた。
翌16日の
阪神戦も一番・DH。第1打席は、阪神の先発・
才木浩人との対決。2023年春のWBC壮行試合で対戦し、フォークをバックスクリーンへ運んだ相手だった。しかし、結果はそのフォークボールを空振りの三振。第2打席は、152キロの高めの真っすぐを強振し、中飛に終わった。
それでも大谷が打席に入り構えると、約4万人のファンが一斉に沈黙。1球1球に固唾を飲んで見守っていた。日本のファンが望んでいた光景がそこにあった。18日からカブスを相手に開幕戦を迎えたが、この2試合、さらに大谷のドラマチックな特大本塁打で、野球界の注目は、MLB開幕戦TOKYOシリーズ一色の雰囲気になってきた。