背番号は、ある選手が引退しても、またある選手に受け継がれていく。2019年も新たな後継者が誕生した。その歴史を週刊ベースボールONLINEで振り返っていく。 百戦錬磨のエースたち
「17」の系譜には“実力派”といえるエースたちがズラリ。王道のエースナンバーともいえる「11」や「18」とは、かなり趣が異なる。「17」には、ある種のダンディズムすら漂うかのようだ。陽の当たる道のド真ん中を、大手を振って歩いているわけではない。ただ、その確かな実力で、やがて覇権を奪ってしまう。そんな好投手たちの系譜だ。
低迷が多かった大洋で黙々と投げまくって初優勝、日本一の立役者となったが、故障のため通算200勝に届かなかった
秋山登や、史上最強のサブマリンとも評されながら、V9
巨人には勝てなかった阪急の山田久志が好例だろう。サイドスローもアンダースローも少数派だが、自らの右腕のみを頼みに、圧倒的多数のオーバースロー投手を凌駕する実績を残している。
着けた期間は短いが、
阪神を追われて南海で復活した
江夏豊も「17」だ。低迷する
ヤクルトで奮闘し、ついに初の優勝、日本一に貢献した
松岡弘や、無冠ながら日本シリーズで輝いた
広島の
山根和夫もいる。
迎えた2019年。そんな「17」を、
西武とヤクルトで、それぞれドラフト1位で入団した
松本航、
清水昇が背負うことになった。もちろん、その可能性は未知数。王道を行くのか、あるいは、個性で名を残すのか。
【12球団・主な歴代「17」】
巨人
スタルヒン(須田博)、
藤本英雄、
槙原寛己、
高橋尚成、
大竹寛☆
阪神
門前真佐人、
白坂長栄、桑野護、源五郎丸洋、
岩貞祐太☆
中日 西沢道夫、
牛島和彦、
上原晃、
川井進(川井雄太、雄太)、
柳裕也☆
オリックス 倉本信護、
本屋敷錦吾、山田久志、
長谷川滋利、
増井浩俊☆
ソフトバンク 田中一朗、江夏豊、
加藤伸一、
山田秋親、
岩嵜翔☆
日本ハム 樽井清一、
山崎武昭、
佐藤誠一、
今井圭吾、
浦野博司☆
ロッテ 中西勝己、
金田留広、
深沢恵雄、
武藤潤一郎、
成瀬善久 DeNA 秋山登、
山下律夫、斉藤明雄(明夫)、
加藤武治、
三嶋一輝☆
西武
玉造陽二、
高橋直樹、
新谷博、
高橋光成、松本航☆(2019年~)
広島 門前真佐人、鵜狩道夫(好応、道旺)、山根和夫、大竹寛、
岡田明丈☆
ヤクルト
宮地惟友、松岡弘、
川崎憲次郎、
川島亮、清水昇☆(2019年~)
楽天 戸叶尚、フェルナンデス、ラズナー。
長谷部康平、
塩見貴洋☆
(☆は2019年)
最初と“最後”の完全試合も

巨人・槙原寛己
「17」の系譜で興味深いのは、意外や意外、王道のド真ん中を歩んでいるような巨人だ。その「17」の初代はスタルヒン。
沢村栄治は伝説のエースと呼ばれるが、戦前に2度のMVPに輝いても、1939年に現在もプロ野球記録の42勝を挙げても、プロ野球初の通算300勝を残しても、通算83完封が現在も破られないプロ野球記録であっても、スタルヒンがエースとして顧みられることはない。
戦後、その「17」を継承したのが、スライダーの先駆者と言われる藤本英雄だ。戦局が悪化しつつあった43年の19完封、防御率0.73はプロ野球記録。通算防御率1.90、通算勝率.697もプロ野球記録だ(ともに投球回2000以上)。プロ野球で初めて完全試合を達成したレジェンドでもある。
ただ、藤本の完全試合は青森でのゲームで、カメラマンがおらず、試合中の写真は現存していない。85年に阪神戦で“バックスクリーン3連発”を浴びた映像で振り返られることも多いが、“最後の完全試合”を達成したのも巨人の「17」、槙原寛己だ。
写真=BBM