最強は「代打、ワシ」?

今年から再び阪神を率いる岡田監督
この2023年から再び阪神の指揮を執る
岡田彰布監督といえば「そらそうよ」。名言というよりは、もはやトレードマークといえるほどの存在感を放つ言葉だ。岡田監督がリーグ優勝に導いた05年には天王山ともいえる9月7日の
中日戦(ナゴヤドーム)で1点リードの9回裏、マウンドの
久保田智之に「ムチャクチャにしたれ!」と檄を飛ばしたのもインパクトを残すが、阪神の監督は歴代、言葉でキャラクターを存分に発揮してきた。
岡田監督が現役時代、選手会長、そして五番打者としてリーグ優勝、日本一に貢献した1985年は
吉田義男監督だった。このとき、シーズン前から吉田監督が言い続けていたのが「土台づくり」。復帰して1年目ということもあったが、解雇の可能性もあった
ランディ・バースを「絶対に必要」と残留させたことが大成功、勢いに乗って日本一にまで導いた。バースの残留がなければ、日本一はおろか、先日の殿堂入りもなかっただろう。
とはいえ、これが最後の歓喜。3期目には
西武でFA宣言した
清原和博に対して「ユニフォームのタテジマをヨコジマにしてでも」と誘うも
巨人にさらわれ、年俸3億6000万円で入団した助っ人の
マイク・グリーンウェルが「神のお告げ」と7試合の出場のみで去ると「まるで竜巻。なごやかな別れでスッキリしました」と、どこか哀愁の漂う言葉を残している。
岡田監督の前、2003年のリーグ優勝に導いた
星野仙一監督は、その指導法について「厳しさ7割、優しさ3割。これが本当の愛情なのだと思う」という言葉を残しているが、時代をグッとさかのぼって、1950年代から60年代という投手の酷使が当たり前だった時代に「30勝投手を出すのは監督の恥」と言っていたのが藤本定義監督。プロ野球で初めて先発ローテーションを導入した名将だった。とはいえ、最強は56年6月24日の
広島戦(甲子園)で飛び出した
藤村富美男監督の言葉、「代打、ワシ」ではないか。兼任監督だった藤村は、自ら代打に立って逆転サヨナラ満塁本塁打。兼任監督でなければ出てこない言葉でもあり、“ミスター・タイガース”の面目躍如といえそうだ。
文=犬企画マンホール 写真=BBM