必勝態勢で明大に立ち向かった法大
法大・加藤監督は今秋限りでの退任を表明した。手前は大島助監督[写真=矢野寿明]
[東京六大学秋季リーグ戦第7週]
10月23日(神宮)
明大4-2法大(明大2勝1敗)
今季最終戦、法大は勝ち点を挙げることができなかった。1勝1敗で迎えた明大3回戦を2対4で落とした。
すでに4位が決まっていた法大は2回戦で雪辱。0対5のビハインドからの見事な逆転劇(9対5)だった。明大の85年ぶりのリーグ4連覇を阻止する意地の勝利。明大・田中武宏監督は「難しいですよ、対校戦は……。法政さんは優勝がなかったのに、あれだけの立派な戦い。六大学ならではです」と称えた。
勝ち点をかけた3回戦。優勝が消滅した明大だが、ベストメンバーで臨んだ。法大も当然、必勝態勢で明大に立ち向かった。次年度を見据えれば、下級生や控えメンバーを起用する選択肢もある。しかし、それは、東京六大学における「シキタリ」に反する。相手をリスペクトし、大学のプライドを胸に「対校戦」に全力を傾けたわけである。
法大ナインは試合後、スタンドへの挨拶を終えると、勝者・明大、敗者・法大と続く両校のエール交換を見届けた。加藤重雄監督によると主将・
今泉颯太(4年・中京大中京高)の発案だったという。東京六大学と応援団(部)は運命共同体。バックアップしてくれた応援団に、感謝の思いを示したのである。加藤監督はこうした学生の自発的な行動がうれしかった。深々と一礼してグラウンドから引き揚げてきた加藤監督は会見後「私も4年生と一緒に卒業します。ありがとうございました」と、今秋限りでの退任を表明した。
2021年から母校を指揮。同秋のシーズン前には新型コロナウイルスの集団感染により、リーグ戦出場が危ぶまれた。こうした危機的状況だからこそ、6校が手を取り合うのが同連盟の運営。大幅な日程変更を5校が了承し、法大は全5カードを消化できた。当時、加藤監督は合宿所で
大島公一助監督とともに学生の面倒を、ほぼ24時間体制で見ていた。スケジュール変更が決定した後のオンライン会見では「感謝しかありません」と涙を流した。
明大2回戦後、法大ナインは勝者・明大、そして法大のエール交換を見届けた。応援団への感謝を示す行動だった[写真=矢野寿明]
神宮球場でプレーできるのは当たり前ではない。加藤監督は毎試合、1925年秋から歴史を刻む東京六大学で戦うことの意味を、学生たちに説いてきた。監督在任3年6シーズンで、天皇杯を手にすることはできなかった。
「この年齢で学生とまた、法政のユニフォームを着られたことはうれしかったです。1回ぐらいは優勝させたかったが『再生』を掲げ、自分のやりたいことはできたと思う。学生野球の本来の姿を見せられたかと思います」
主将・今泉は「野球部員である前に学生」と、日常生活から見直してきた。加藤監督が勝利と並行して目指してきたイズムを新たな体制、3年生以下が継いでいくことになる。