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一、二軍の当落線上も打撃センスはピカイチ…他球団が評価する「巨人の若武者」は

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実戦でアピール合戦


今年こそ、レギュラー奪取を目指す中山


 居場所をつかむためには、結果で示すしかない。巨人で定位置争いが最も熾烈なポジションが遊撃だ。

 昨年は門脇誠が最有力候補と目されていたが、攻守で試行錯誤した。新人の2023年は無我夢中で走り抜けて活躍したが、相手も当然研究してくる。打率.243、0本塁打、21打点は納得のできる成績ではない。この春季キャンプでは打撃改造に着手。右手と左手を大きく離してバットを握り、バスターのような形で振り抜く新フォームを実戦で試みている。

 守備力に定評がある泉口友汰は打撃でアピールしている。今年初実戦となった2月11日の紅白戦に白組の「五番・指名打者」でスタメン出場すると、2回に泉圭輔の内角低めの直球を右翼席に運んだ。新人の昨年は打率.201、1本塁打、9打点。パンチ力と確実性が高めれば、出場機会が増えるだろう。

 そして、この男も目の色を変えて今年に挑んでいる。高卒5年目の中山礼都だ。泉口が本塁打を放った11日の紅白戦。初回一死二塁の好機で、遊撃にボテボテの内野ゴロを打つと一塁へ全力疾走。間一髪のタイミングでアウトになり、頭を抱えて悔しがった。4回は石川達也から左中間に鋭い打球を放ち、外野の守備がもたつく間に二塁を奪う好走塁。犠飛で勝ち越しの本塁を踏んだ。

悔しさを糧にはい上がる


 昨年は悔しさを糧にはい上がった。前半戦は14打数1安打と結果を残せずファームで過ごす時期が長かったが、後半戦は30打数13安打で打率.433と打撃でアピール。数字だけでなく、打席の内容も濃い。9月7日のDeNA戦(東京ドーム)では、1点ビハインドの9回二死一、二塁の好機に代打で起用され、右前適時打で同点に追いついた。DeNAと対戦したCSファイナルステージでは、左肋骨骨折で欠場とした吉川尚輝の代役として二塁に入り、第5戦で5回にプロ初アーチとなる決勝ソロ。阿部慎之助監督が「あんな当たりは初めて見た」と声を弾ませ、「打席が少ない中で数字を残した。一軍での成功体験が大きいんじゃないかな」と目を細めた。
 
 かつては、ポスト坂本勇人に最も近い存在として期待が大きかったが、なかなかチャンスを生かせなかった。門脇、泉口の台頭で危機感を抱いただろう。「本当に苦しい思いをたくさんしました。二軍に落ちても落ち込まずに、桑田(桑田真澄)二軍監督や(二軍内野守備兼走塁コーチの)脇谷(脇谷亮太)さんらが背中を押してくださる言葉を掛けてくれたので、もう一回はい上がってやるという気持ちを持てました」と振り返っている。他球団のスコアラーは「打撃センスはもともと高い。ファームで結果を出していたけど、一軍でも対応力がついている。いい選手ですよ」と評価する。

大先輩にある向上心の強さ


 中山は打撃だけでなく、守備力の安定感を高めることも求められる。遊撃の定位置を15年以上守り続けた坂本は、17年に週刊ベースボールのインタビューで守備に対する向上心の強さを語っている。

「年間15個エラーをしたとして、40~50球(の守備機会)に1個。後に同じような打球が来て、50個前のゴロのことが瞬時に頭の中に浮かんで、反省を生かして良い形で処理できることが大事なんじゃないでしょうか。頭だけではなく体も自然に反応する。そういう切り替えが最近できるようになってきたと思いますし、エラーを減らしていく、良いプレーをしていくために必要な要素なんだと思います。試合後に映像とかを見返すことはほぼないですけど、井端さんと話をします。『グラブを出すタイミング遅かったですか?』とか。エラーしたときに限った話ではないんですが、何かあれば常に確認をしますね」

「スローイングミスもそうですが、これまで速い打球を弾くことがすごく多かったんです。井端(井端弘和)さんがコーチになられて、『グラブを先に出してしまおう』というアドバイスをいただいて、さらに力を抜くことを意識したことで、試合でも練習に近い感覚でグラブを使えるようになってきました。試合になると、どうしても速い打球に対して体が硬くなってしまうもの。まだ完ぺきではないんですけど、手応えはあるし、成長してきているかなと思います」

 ハイレベルな定位置争いがチーム力の底上げにつながる。開幕に向けて中山のアピールは続く。

写真=BBM

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