大きなプラスアルファに

今年の実戦で好投を続ける田中
ロッテがV奪回を狙う上でカギを握るのが、若手投手の台頭だ。昨オフに
佐々木朗希がポスティングシステムでドジャースに移籍。
石川柊太が
ソフトバンクからFAで加入したが、先発で稼働する新星が台頭してくれば大きなプラスアルファになる。その筆頭候補として期待されるのが、高卒3年目の
田中晴也だ。
3月6日に行われたオープン戦・
広島戦(ZOZOマリ)では3回から二番手で登板し、5回2安打無失点3奪三振の快投。肌寒い気候だったが直球は最速152キロを計測し、決め球のフォークの精度も高い。課題だった走者を置いてのクイックモーションにも不安はなく、制球が乱れることはなかった。力でねじ伏せるだけでなく、チェンジアップで打たせて取るなどメリハリの着いた投球で5回を55球にまとめた。他球団のスコアラーは「先発の枠に入ってくるでしょう。ストライクゾーンで直球が押し込めるので変化球も生きてくる。攻略するのは難しい投手になっている」と警戒を強める。
身長186センチ、体重92キロの恵まれた体格から力強い球を投げる姿に、大きなロマンを感じさせる。日本文理高で2年春からエースを務め、夏に三番打者でも活躍して甲子園出場を決めた。3年夏に大台の150キロに到達。新潟県大会の決勝・帝京長岡高戦では延長11回を一人で投げ抜き、3安打1失点の完投勝利を飾った。心身共にタフで、まさにエースの投球だった。
ロッテにドラフト3位で入団し、2年目の昨年7月3日の
日本ハム戦(ZOZOマリン)でプロ初勝利をマーク。5回を投げて5失点だったが自責点ゼロだった。打線の援護で白星がつき、「初勝利できたのはすごくうれしいです。今年は2年目ですけどこの1勝で終わるつもりはなく、コンスタントにもっと良い投球を続けたい気持ちなので、次こそは逆にチームを助けるくらいのピッチングをしないといけないなと思います。これからは先発として、勝てるピッチャーになりたいです。初勝利は、野手の方、(二番手以降に)投げた投手の方が頼もしく、勝たせてもらった1勝だったので、自分の力で少しでも勝てる確率が上がるようなピッチャーになりたいです。(ウイニングボールは)実家に飾ります。プロ野球人生で一球しかないメモリアルなボールなので、大切にしたいです」と喜びをかみしめていた。
高卒3年目が重要なシーズン

佐々木も高卒3年目に完全試合を達成した
昨年は4試合登板で1勝1敗、防御率1.80。まだまだ成長段階であることを首脳陣が配慮し、登板間隔を空けて投球回数が20イニングにとどまったが、今年は先発ローテーションの一角を狙う。ロッテの主戦投手のキャリアを見ると、高卒3年目が重要な年になっている。佐々木は高卒2年目の21年に3勝を挙げ、3年目に完全試合を達成するなど9勝をマーク。先発の軸の
種市篤暉はプロ2年間で未勝利だったが、3年目の19年に開幕から救援で好投を続けると、4月下旬から先発ローテーションに定着してチーム最多タイの8勝を挙げた。116回2/3を投げて135三振を奪い、奪三振率10.41を記録。種市は週刊ベースボールのインタビューで、直球の重要性を強調していた。
「あまり変化球を投げたくないというか、変化球ピッチャーにはなりたくないんです。真っすぐで押していける、真っすぐで抑えられるピッチャーになりたい。その上で100点に近いボールを1つ2つ磨いていきたいです。60点や70点のカットボールやツーシームを投げても意味がないかなと思っています」
「マックスは上げていきたいですし、やはり160キロを投げたい。160キロを目指しています。でもそれ以上にアベレージが上がれば、変化球も絶対にもっと生きてくる。常時150キロを出すことができれば、スライダーやフォークでもっと三振を取ることができると思うので、やはり真っすぐは磨いていかなければなりません」
田中も佐々木、種市のように高卒3年目に先発の核になれるか。目標に掲げる2ケタ勝利をクリアすれば、資格を持つ新人王も見えてくる。ブレーク間近の最速155キロ右腕に要注目だ。
写真=BBM