対メジャー・リーガーでも好打

今年はバッティングのレベルが上がっている前川
ドジャース、カブスとプレシーズンゲームで対戦し、2連勝を飾った
阪神。投打ががっちりかみ合った戦いぶりに選手の表情が明るい。特に状態の良さが際立つのが、高卒4年目の
前川右京だ。
結果だけでなく、打撃内容がいい。3月15日のカブス戦(東京ドーム)で2回にライアン・プレスリーのスライダーを捉えて鋭いライナーを放ったが、三遊間へシフトを敷いていた三塁のマット・ショウの正面を突いた。4回は一死二塁からタイソン・ミラーの直球を左翼線にはじき返す適時二塁打。16日のドジャース戦(東京ドーム)でも、6回に身長203センチ右腕のタイラー・グラスノーが投じた外角から入ってくるスライダーを左前にはじき返した。
キャンプから高い評価
2月の春季キャンプ中盤に、打撃フォームの修正に着手。背筋を張ってトップに入れるタイミングを早くすることでタメが作れるようになり、逆方向に強く伸びる打球が目立つ。昨年まで阪神で指揮をとっていた
岡田彰布前監督は、春季キャンプで助言を送った前川の修正能力を高く評価していた。週刊ベースボールのコラムで、以下のように語っていた。
「さて阪神だが、ひとまず中間報告という形で、問題なく進んでいると言っていいやろな。このキャンプでメディアに注目されているのが前川(前川右京)なんだが、気になったところがあったので、ひと言、ふた言、声を掛けた。それはタイミングの取り方で、どうしても遅れているのが目立っていた。これは昨年もそうだったので、ワンポイントを指摘したら、すぐに自分のものにしていた。この前川をどう起用するのか。藤川(
藤川球児)監督の考えを聞いていないので分からないが、やはりレフトのレギュラー。ここを前川はつかみにかからないとな。センター・近本(
近本光司)、ライト・森下(
森下翔太)。この3人の外野陣は相当強力(守備強化はあるが)とオレは感じる。今年、新外国人選手が入って、それなりの評価を得ているが、あえて控えに回すような結果を前川は残すしかない。まあ実に楽しみな選手である」
岡田前監督の言葉を裏付けるように、左翼の定位置撮りへ強烈にアピールする。3月5日の
中日戦(甲子園)では、2回に
涌井秀章の外角高めの直球を左翼ポール際へアーチを放った。3回も涌井の外角低めのシンカーを右翼戦に運ぶ二塁打。5回は
柳裕也に対して粘り、9球目の直球を詰まりながらも中前に落とした。シーズンでも対戦する一線級の投手を相手に結果を出したことは大きな価値がある。7日の
DeNA戦(甲子園)では初回に
東克樹のツーシームを捉えて右翼ポール際に先制2ランを放った。3回も無死一、二塁から追加点につながる左前打。球界を代表する左腕は前川を脅威に感じただろう。
阪神打線で重要な役割の六番
今年から就任した藤川球児監督は三番・
佐藤輝明、四番・森下翔太、五番・
大山悠輔のクリーンアップ構想を打ち出している。この3人の後を打つ六番がポイントゲッターとして重要な役割を担う。前川は昨年に自己最多の116試合出場で打率.269、4本塁打、42打点をマーク。週刊ベースボールのインタビューでこう話している。
「毎試合、試合に出場させてもらっている中で、疲れが出て動きが鈍くなるときが出てくると思うので、それを避けるために、どうやったら疲れが取れるかなどを考えながら、試したりしています。本拠地、甲子園の試合のあとなどは、体のメンテナンスをしっかりやったりしますし、何が一番自分に合うのかを考えながら取り組んでいて、今年はそれができているのかな、と思います」
「去年は、体の面、健康の面に関しての自分の認識が甘過ぎたと思っていました。だからこそ、そこは反省して今年は同じことはしないぞ、という考えがあるので、ここまでは、できていると思います。やっと少しずつ自己管理できるようになってきたかなと、感じています。常に自分の体と会話しながら……そういうと大げさかもしれませんが、今自分が何をするべきなのかを考えながら、日々を過ごしています」
経験を糧に一歩ずつ成長している。天才的な打撃センスでナインに一目置かれる21歳の若武者は不動のレギュラーをつかめるか。打率.280、20本塁打は達成可能な数字だ。
写真=BBM