逆方向に飛ばす打球

オープン戦で勝負強い打撃を見せるネビン
西武に新加入したタイラー・ネビンの評価が高まっている。
3月15日の
中日戦(バンテリン)で初回にドラフト2位左腕・吉田聖弥の直球を右前に運ぶ先制適時打、6回に
祖父江大輔から中前適時打を放った。16日の同戦でも、初回にアスレチックス時代のチームメートだった相手左腕のカイル・マラーのカーブをとらえて先制の2点中前適時打。三番に入るネビンの一打で試合の主導権を握る。18日の
広島戦(ベルーナ)でも、初回無死一、三塁で相手右腕・
常廣羽也斗投手の直球を右中間にはじき返す2点適時二塁打。3試合連続の先制適時打で打線を勢いづけた。
昨年まで
オリックスでプレーしていた
レアンドロ・セデーニョを四番で起用する方針だったが、「左大腿直筋損傷」で戦線離脱。開幕に間に合うか微妙な状況になっている中、ネビンの打撃好調は心強い。他球団のスコアラーは「打撃技術が高い。振り回さずにきっちりコンタクトするので、センターから逆方向に安打を飛ばせる。
阪神でプレーしていた
マートンを彷彿とさせます」と警戒を強める。
通算1020安打のマートン

阪神で安打製造機として活躍したマートン
球団ワースト記録の91敗を喫した昨年はリーグワーストの350得点。ポイントゲッターとして期待された助っ人外国人が期待外れの結果に終わったのが誤算だった。四番で起用されたヘスス・アギラーは30試合出場で打率.204、2本塁打、10打点。長距離砲のフランチー・
コルデロも23試合出場で打率.129、1本塁打、4打点とふるわなかった。
セデーニョはオリックスでプレーした実績があるため計算ができる。ネビンは日本野球に対応できるか未知数だったが、オープン戦の打撃を見ると期待値が上がる。助っ人外国人は長距離砲が多いが、中距離打者として成功したタイプもいる。その代表的な選手が、阪神で2010年から6年間プレーしたマット・マートンだ。来日1年目にセ・リーグシーズン最多安打の214安打を放つなど、最多安打のタイトルを3度獲得。14年に打率.338で首位打者に輝いた。
引っ張るだけでなくセンターから逆方向に安打を飛ばす。NPB通算1020安打は球団の外国人最多記録だ。日本の食生活にストレスを感じなかったことも活躍できた大きな要因だろう。
日本の生活にアジャスト
異国の地で成功するためには「郷に入っては郷に従え」ということわざがあるように、日本の野球、生活に対応する能力が求められる。ネビンはその点で心配がなさそうだ。週刊ベースボールの取材でこう語っている。
「昨季までいたアメリカと日本では春季キャンプのやり方が大きく違います。良いところ、悪いところそれぞれありますが、ひとつ言える大きな違いが、オフは日本のほうが多いこと。今回は4勤1休でしたが体の調整がしやすく、次のクールへ向けて状態を整えられたので、すごくいいなと感じました。アメリカでは1カ月半ぐらい春季キャンプをやりますが、その間で2日ぐらいしかオフがないので、かなりハードなんです。生活面では日本は食事が最高! ホテルのビュッフェもすごくおいしいですし、何より驚いたのはお寿司の安さ。アメリカの半額以下で、しかもこんなにも新鮮でおいしいお寿司が食べられるなんて心の底からうれしいよ」
セデーニョだけでなく、
源田壮亮も下半身の状態不良で戦列を離れるなど主力に想定外のアクシデントが続いているが、前を向いて戦うしかない。ネビンはチームの救世主になれるか。
写真=BBM