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センバツ2025

【センバツ】横浜が公式戦無敗の20連勝で頂点へ 名門復活の始まりは昨年5月チームに投じた“劇薬”

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「監督が勝負をする意思表示」


横浜高の主将・阿部葉は閉会式で、紫紺の大優勝旗を手にした[写真=宮原和也]


 横浜高が19年ぶり4度目のセンバツ制覇を遂げた。智弁和歌山高との決勝は、11対4で快勝した。三番の主将・阿部葉太(3年)は3回裏の勝ち越し打を含む4安打3打点。守っては3対1の6回表二死三塁から、中堅へのライナーをダイビングキャッチ。相手に流れを渡さない美技で、直後の6回裏は一挙6得点のビッグイニングでリードを広げた。横浜高・村田浩明監督が徹底してきた「守備からリズムを作る」スタイルを体現したのだ。

 阿部葉は2年生5月、新たな主将に就任した。異例の抜てき。同春の県大会で横浜高は東海大相模高に1対5で敗退。危機感を覚えた村田監督は、チームに劇薬を投じたのである。

「監督が勝負をする意思表示。大人が本気を見せないと、子どもたちも変わらない」

 3年生の取り組みにはリスペクトしつつも、教育的な配慮をしながら慎重に進めたという。

「夏に向けて発奮させるために、3年生だけで練習試合を組んだんですが、残念ながら、伝わってくるものがなかったんです。こちらが求めているものとは、違う方向に……。そこに情はありません。3年生には十分、チャンスを与えてきましたので……。一方、阿部葉ら当時の2年生は、この時期にグンと上がってきた。『全国制覇をしたいんだ!!』という気概が明らかに見えてきたんです。そこで私が『誰か(主将として引っ張っていける選手は)いないか?』と問いかけると、阿部葉が『僕がやっていきます!!』となりました。昨夏は県大会決勝進出(準優勝)。阿部葉が主将でなければ、あそこまで勝ち上がれなかった。昨秋は経験値が生かされたと思っています」。県大会、関東大会、明治神宮大会を制して公式戦15連勝。あくまでも目標は甲子園の頂点に立つことであり、冬場も追い込んだ。阿部葉のリーダーシップがセンバツV、名門復活の原動力であったことは言うまでない。

 ただ、キャプテン・阿部葉だけではチームを回すことはできない。同期の3年生には役者がそろっていた。高山大輝部長は明かす。

「この学年は会社の組織図で言えば、阿部葉が社長。練習では主将が注意する前に、専務である野中珠が出てきます。今村(今村稀翠)がフォロー役であり、裏ボスには奥村(奥村凌大)と為永(為永皓)がいる。各部門で主要人物が控えているのは、この代の強みです」

センバツ制覇は通過点


 センバツ制覇は、通過点である。阿部葉は優勝直後の場内インタビューでこう言った。

「まだここでゴールではないとは思っているんですけど、まず春に向けて神宮大会からやってきたことが報われてうれしいと思います」

 村田監督にも、達成感はない。

「夏に本当に完成したチームで、またこの甲子園球場に戻ってきまして、一戦一戦、戦って、このメンバー20人以外のスタンドの選手も、全員一丸となって、そしてOBの方々、保護者の皆様、学校関係者の皆様、皆が一枚岩となって、また夏、目標を定めて、頑張りたいと思います」

 昨秋の新チームから公式戦無敗の20連勝。「秋春連覇」は史上5度目だが、横浜高にとっては平成の怪物・松坂大輔(元西武ほか)を擁した1998年以来2度目である。「最強」と言われた当時のチームは、夏の甲子園、秋の国体も制して公式戦無敗の44連勝を遂げた。周囲は騒ぐが、当事者は目の前の一つひとつの試合に、全力を注いでいくだけである。

文=岡本朋祐

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